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No.87 |
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タイトル
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ザ・フィールド |
(原題)
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THE FIELD |
監督
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ジム・シェリダン |
キャスト
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ロバート・ハリス、ジョン・ハート、トム・ベレンジャー他 |
制作
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1990年/アメリカ |
ジャンル |
ドラマ |
上映時間
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107分 |
評価
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★★★★ |
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<ストーリー>
舞台はアイルランドの片田舎キャリグソーモンド。農民ブル(リチャード・ハリス)は自分の土地に迷い込んだロバを殺してしまうほど土地への執着は深いものだった。しかし、ブルの耕すその土地は未亡人からの借地。やがて未亡人が土地を競売に掛ける事になった為、ブルは村人に謀って安く土地を手に入れようとするが、村の開発にやって来たアメリカ人が彼の前に立ちはだかる.....。
<コメント>
ジョン・B・キアヌ原作の舞台劇を『マイ・レフトフット』(1989)等アイルランドにこだわる作品を撮りつづけるジム・シェリダンが監督・脚本まで手がけた作品。自ら手が塩にかけて育てた土地を守ることに執念を抱く男のエゴと悲劇を描いています。
とにかく最大の見せ場はこの作品でアカデミー賞のノミネートをを受けたリチャード・ハリスの鬼気迫る演技。自らの信念に従い魂を込めた土地を守ろうとしながら、やがて自らがその執念に囚われ翻弄され、人生の歯車を狂わせて行く男を、いや男の”狂気”を見事に演じています。”土地”というのは多くの場合世代を越えて継がれ行くものであり、ゆえに伝統を重ねつつ重厚さや生命にあふれる部分もありますが、それゆえに人の身体や精神を縛りつける側面もあります。だから守ろうとする者と離れようとする者が出てくる。この物語では守り続ける側である主人公の土地が借地であったことが悲劇の始まり。主人公はどんなに苦しいときも受け継いだ土地を開拓し続け立派に育て上げた人物。彼が手塩にかけて育てた土地は自分の家族や子供よりも大事なもの。これを守りたい気持ちはもちろん理解できます。また作品中ではどちらかというと悪者扱いですが、飢饉のときに土地を捨ててアメリカに渡り成功を収めて戻ってきたヤンキー、彼は土地を買収し開発を進めようとしますが、単に土地を捨てただけでなく、最終的にはやはりそこに居場所を求め戻ってきたわけですから、一概に彼を責めることは出来ません。また主人公の息子についても土地に残った自分たちの貧しさとヤンキ−の現状を見比べると、土地に執着しない気持ちもわからないでもありません。しかしそういった新しい価値観の登場によって、その社会を覆っていた従来の価値観やシステムが崩れ始めたとき、その割れ目から人々の本音が溢れ出します。従来の価値観に生きる人々にとって、それはそのまま過去の人生に繋がるわけですから、それを否定される社会では生きていけません。そしてそう思った瞬間から、人に狂気が宿り始めます。
その他の俳優陣も悪くなく、ジョン・ハートは少しオーバー気味ですがアクの強い役にぴったりで、息子役のショーン・ビーンもリアリティがあります。母親やアメリカ帰りのヤンキー・ピーターのキャラクターについてはもう少し描きこんで欲しかったところ。その他ちょっと滑稽に思える演出もあって、そのあたりはご愛嬌ですが、それでも終盤はリチャード・ハリスの演技も最高潮を向かえ、見ごたえがあります。
対象が土地であれ宗教であれこういった対立は人間が存在する以上避けられないものかもしれません。日本ではどちらかというと”土地”よりも”家”を舞台にした作品が多いような気がしますが、いずれにしても普遍的な問題だと思います。例えばこの作品では「じゃあ、それぞれどうすれば良かったのか?」を考えると難しいですね。でも避けては通れないし、考えていかなくちゃならない。
牧歌的で素朴な力強さを感じさせるアイルランドの風景が美しくも哀しい作品です。
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