No.133
タイトル
タンデム
(原題)
TANDEM
監督
パトリス・ルコント
キャスト
ジャン・ロシュフォール、ジェラール・ジュニョー、ジャン・クロード・ドレフュス他
制作
1987年/フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
91分
評価
★★★★
<ストーリー>
20年以上にわたりラジオのクイズ番組の司会者を務めてきたミシェル・モルテス(ジャン・ロシュフォール)。そしてその活動を陰で支えてきたディレクター・リヴト(ジェラール・ジュニョー)。しかし番組の人気は落ちる一方で、とうとう打ち切りが決まってしまう。モルテスのことを考えると忍びなく、番組終了を彼に伝えられないリヴトは、黙って放送のまねごとを続けるが.....。

<コメント>
『髪結いの亭主』(1990)で日本でも大ブレイクしたフランスを代表する映画監督パトリス・ルコント監督の作品。心に寂しさを抱える往年の名司会者と彼を支える中年ディレクターの物語。中継車で旅を続けながらクイズ番組を行うという設定にあわせたロードムービーとなっています。
同じくジャン・ロシュフォールが主演した『髪結いの亭主』は個人的に人生のベスト10に入るほどの作品ですが、やはりルコントとジャン・ロシュフォールは相性がいいと思います。ルコントは大人の男が心の隙間を埋めようとする様を情感を持って描ける人。そしてロシュフォールはそれを子供っぽくなるぎりぎりのところでしっかり演じられる人。この2人の持ち味が重なったときに画面から立ち上ってくる悲しさは、笑えるほど適度に軽く、そして深いです。
ルコントの映画では女性が男性の理想像としての役割を強いられることが多く、それが批判の対象となる場合もありますが(個人的には自分が男なのでOKなのですが...)、今回は救世主となるような女性は登場せず、その分男の寂しさや優しさがじんわりとしみこんできます。それでも主人公を支える相棒に少しロマンスを用意するあたり、やはりルコント。相棒役リヴトを演じるのは最近公開された『バティニョールおじさん』が好評だったジェラール・ジュニョー。感情的な人間を支える人情味溢れる役柄はこの人の真骨頂とも言えますね。そう言えば『パティニョールおじさん』では、相手は子供でした。
見た目も性格も正反対な男二人が、時には対立し、時には和解しながら旅を続けるというストレートなストーリーですが、それぞれの人格がちゃんと描かれているので楽しめます。二人と外部との連絡は電話だけなので、ともするとリアリティを失いがちですが、それはそれでちゃんと伏線となっています。
私が一番好きなのは二人で車に座ってクッキーをほおばるシーン。繰り返し流れるBGM(リッカルド・コチャンテの「僕の隠れ家」という曲らしいです。使い方がちょっとくどい。)もここではヴォーカルはなくピアノだけ。これがまたいい。この寂寥感はそれだけで立派なラストシーンになりうると思います。そこには二人並んでいますが、伝わってくるのは孤独感。

人間関係の中に存在する事実を隠しながら進行するストーリーでは、その事実の表出の瞬間が作品の良し悪しを決めてしまう場合があります。この作品ではそこが見事に処理されています。その部分とラストが少しうまく行き過ぎのような感もありますが、しかしそれによってすがすがしい余韻が残るのも確か。全体的な構図の素晴らしさ、心に残った感情をそのまま持続させるラスト、さすがルコントです。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送