No.130
タイトル
サイレント・ボイス/愛を虹にのせて
(原題)
SILENT VOICE
監督
マイク・ニューウェル
キャスト
ジョシュア・ゼルキー、アレックス・イングリッシュ、グレゴリー・ペック他
制作
1987年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
115分
評価
★★
<ストーリー>
リトルリーグエースのチャック(ジョシュア・ゼルキー)はミサイル基地で核兵器の恐ろしさを目撃。核兵器がなくなるまで野球をやめると宣言する。その新聞記事を見たプロ・バスケット界のスーパースター・アメイジング(アレックス・イングリッシュ)も輝かしい経歴を捨て仲間に入る。そして続々とスポーツ界のスターたちが後に続くが.....。

<コメント>
近年、製作総指揮を務めた『トラフィック』(2000)や『ハイ・フィディリティ』(2000)が好評だったマイク・ニューウェル監督の作品。軍事基地の見学で本物の核ミサイルを見たときの衝撃から、地球上から核兵器がなくなる日まで野球をやめる決意をした少年の物語。それにしても邦題はいただけませんな。
己の願望や祈りを成就させるために何かを捧げるという設定を聞くと。、アンドレイ・タルコフスキー監督の『サクリファイス』(1986)何かが思い浮かびますが、こちらは核戦争が起こる前段階の話。リトルリーグのエースである少年が主人公ということでリアリティのあるシチュエーションのように思いますが、そもそも冷戦構造をきちんと子供に説明できていればここまでの話にはならなかった気がして、個人的には逆に冷めてしまいました。もちろんそういったリアリティをこういうドラマに求めること自体間違っているのかもしれません。この作品は人間の良心の結晶とも言うべき純粋な少年の想いの尊さ、そして信念を貫くことの難しさ、貫き通したものだけが得られる感動を素直に感じ取ればいいのでしょう。人を動かすことが出来るのはシステムやではなく人の”想い”や”信念”なのだということ。ただ、そうするとニューウェル監督独特のアイロニーに至らないファンタジーっぽさが喉につかえるんですけどねー。
それでも少年と父親の対立と交流はなかなかの見もので、父親は唯一理想と現実の狭間で悩むキャラクターであり、彼の言葉には重みがあります。「核兵器はなぜ必要なの」という少年のシンプルで強い問いかけ同様、「核兵器は無くならん」とあっさり言ってのける父親の言葉もまた真実。この2人の関係と母親と妹を含めた家族の関係の変化、成長を描けていれば非常に面白い作品になったのではないかと思いますが。
出演するプロ・スポーツ選手の中には実名で登場するスターもいるようなので、興味のある方は探してみてはいかがでしょうか。

<以下、ネタばれ注意!>
大統領役を演じた名優グレゴリー・ペック(私と同じ誕生日!笑)を持ってしても、作品に背骨を通すことは出来ませんでした。彼の演技は中盤まではドラマにリアリティを与えていますが、途中から残念ながら腰砕け。そもそも核全廃が実現してしまうこと自体があまりにも非現実的。ビデオ・パッケージには”この物語はいつかきっと<現実>になるだろう・・・”とかかれていますが、昨今のアメリカがやっていることと重ね合わせてみると、これほど皮肉なメッセージはありません。反核を唱える有志たちが理想郷のようなものを作るあたりもヒッピーを生み出したアメリカならではの発想で、何とも子供っぽい。核兵器が無くなる結末でなかったら彼らは理想が実現する日を夢見て永遠に漂い続けたことでしょう。

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