No.369
タイトル
夕映えの道
(原題)
RUE DU RETRAIT
監督
ルネ・フェレ
脚本
ルネ・フェレ
キャスト
ドミニク・マルカス、マリオン・エルド他
制作
2001年/フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
90分
評価
★★★★★

【 ストーリー 】
パリの下町ルトレ通り。この街角にひっそりと孤独に暮らす老女マド(ドミニク・マルカス)は、自分の生活に他人が干渉するのが我慢ならない。一方会社を経営する独身の中年女性イザベル(マリオン・エルド)は、偶然出会ったマドを放っておけなくなり、世話をするために彼女の元へ足繁く通うようになるが.....。

【 コメント 】
2007年にノーベル文学賞を受賞したイギリス人女性作家ドリス・レッシングの「夕映えの道」を映像化した作品。ドリス・レッシングも寡作で有名ですが、監督のルネ・フェレもそうですね。というか日本で公開されていないだけなのですが。本作には俳優としてもちょっと出演しています。

人間にとって本質的な問題である”死”。そして日常生活の中で死への道しるべとなる”老い”。私たちは日々この問題と向き合っていないようで向き合っています。女性二人の偶然の出会いから、お互いの交流を通して、この問題に静かにゆっくりと切りこんでいき、最後は骨まで到達するという作品。いや、言い方がちょっとおおげさですが...。
主人公であるキャリアウーマンのイザベルもそうだし、マドの家の電気を修理にきた技師も”老い”はやがて来るとわかっていながらどこか遠くの出来事のよう。この時点ではイザベルも私たちも同じ立場にいると言えます。しかしながら、のめりこむようにマドに愛を注いでいく彼女の行いは他人だけでなく自分自身の心も溶かしていきます。イザベルはマドの話を聞いて彼女の歩んできた人生に触れるうちに、それがやがて遠くにあるものではなく、己もまさに老いつつあるということを実感したのではないでしょうか。ラストシーンのイザベルの言葉が本音だと思うのは、この心境の変化が見て取れるからです。
この作品には、親と子の絆や友人同士の絆ではなく、人間同士の絆が描かれていると思います。絆とはひょっとしたら人間が抱える根本的な孤独から発生するのかもしれません。他者を受け入れること、他者に関心を寄せること。今の時代にまたあらためて重要になってきた気がします。淡々としたドキュメンタリーのような、ちょっと長め短編のような、それでいて人間にとって重いテーマをさらっと描いて見せた本作は誰もが一度は見るべき名作だと思います。やわらかい日差しの映像があまりにも優しい。

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