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タイトル
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死ぬまでにしたい10のこと |
(原題)
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MY LIFE WITHOUT ME |
監督
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イザベル・コヘット |
脚本
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イザベル・コヘット |
キャスト
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サラ・ポーリー、デボラ・ハリー他 |
制作
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2003年/カナダ、スペイン |
ジャンル |
ドラマ |
上映時間
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106分 |
評価
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★★★★ |
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【 ストーリー 】
幼い娘2人と失業中の夫と共に、清掃の仕事をしながらトレーラーハウスで暮らすアンは、ある日体調を崩して病院に運ばれる。てっきり妊娠かと思っていたアンに告げられたのは余命数ヶ月という最悪の結果。アンはその事実を家族に黙ったまま、「死ぬまでにしたい10のこと」をノートに書き出し、ひとつずつ実行してゆくことにする ...。
【 コメント 】
テリー・ギリアム監督の『バロン』(1989)で頭角を現した名子役サラ・ポーリー主演作品。23歳にして余命数ヶ月と宣告された女性が、残りの人生を精一杯生きる様を描いた物語。監督はスペイン出身のイザベル・コヘット。製作総指揮には同じスペイン出身でアカデミー賞監督のペドロ・アルモドバル(『オール・アバウト・マイ・マザー』(1998)など)が名を連ねています。
サラ・ポーリー演じる主人公アンは初めて付き合った男性とそのまま結婚し子供も生まれ、ほとんど自分の人生を楽しむまもなく”生活すること”に追われている女の子。二人の子供は愛らしく、夫も優しい。生活は豊かではないし、母親との確執もそれなりにある。これが幸せと言えなくもない気がするけれど、他に違う人生があるような気もする。そんな彼女を突然襲う病気。そして余命数ヶ月の宣告。
突然の出来事に戸惑い、家族のことを最大限思いやりながらも、残りの人生を自分のために生きると決めた彼女は”死ぬまでにしたい10のこと”を書き出し、行動に移します。その様子が驚くほど淡々と描かれているので、彼女の決意の強さが逆にこちらの心に真っ直ぐ届きます。”10のこと”の中には家族を裏切る行為も含まれていて、その内容は決してすべて褒められるものではありませんが、家族を悲しませないために自分の死を伝えない代わりに、他人に自分の存在を知らしめたかったとも受け取れます。死を迎えるには彼女はあまりにも世界を知らなさ過ぎたのでしょう。
一人悲しみを背負ってこの世から消えようとする彼女ですが、冒頭、雨を、空気を、冷たさを全身で受け止め、五感で感じる彼女の描写があります。彼女の人生は残念ながら短かったけれど、最後に本当の意味で”生きる”ということを理解した彼女は納得した人生を送れたのかもしれません。
サラ・ポーリーの静かな演技、必要最小限の音楽、貫かれた客観的な視点などによって、重いテーマながらも清清しいカタルシスを得られる作品だと思います。
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