No.82
タイトル
ミラレパ
(原題)
MILAREPA
監督
リリアーナ・カヴァーニ
キャスト
ラヨス・バラツォビッツ、マルチェラ・ミケランジェリ他
制作
1973年/イタリア
ジャンル ドラマ
上映時間
108分
評価
★★★
<ストーリー>
チベットの聖人ミラレパについて研究しているイタリア人の学生レオ(ラヨス・バラツォビッツ)。彼は、東洋に研究に出かけるという教授夫妻と共に車で空港に向かう途中、車ごと崖から転落してしまう。教授とともに瀕死の状態に陥った彼は、突然ミラレパの魂が乗り移ったかのように、助手席にいる教授に向かってミラレパの半生を語り出す.....。

<コメント>
『愛の嵐』(1973)の成功で一躍イタリアを代表する存在となったリリアーナ・カヴァーニ監督が、チベットに古くから伝わる古典「チベットの偉大なヨギー・ミラレパ」をもとにミラレパの数奇な運命を映画化した異色作(撮影されたのは『愛の嵐』の前年)。脚本は『愛の嵐』と同じくイタロ・モスカーティと共同で手掛けています。ミラレパとは11世紀のチベットに実在した聖人です。自分の家族に冷たくした親戚に復讐するために呪術を会得したり、悔恨の意から厳しい修行をしたりした人で、チベットではヒーロー的な人気があるそうです。

ミラレパの書を翻訳している学生が車での事故をきっかけに、ミラレパの魂が乗り移ったかのように彼(ミラレパ)の人生を語り始めるという、まさに異色な切り口の作品。ただ単にミラレパに焦点を当て、彼の人生や辿った運命をドキュメンタリー的に語るのではなく、彼の魂そのものを現代に蘇らせた着眼点は非常に面白いと思います。また、西洋人がミラレパの人生を追体験するというのも大胆な試みと言えるでしょう。しかし、出来れば主人公に語らせるだけでなく、彼の人生とミラレパの人生を交錯させて掘り下げて欲しかった気がします。もちろんそういう構成で話は進むのですが、ミラレパの人生が受難と苦悩の連続であるため、それを受け止める側の主人公の背景や精神構造がまだ弱いように思えました。主人公は家族や親族との関係を始め、生命や世界との関わり等さまざまな悩みや疑問を抱えるまさにミラレパ的境遇、精神構造であるがゆえに、必然的に彼を研究するに至り、ひいては師(=教授)の囁きによって彼の人生を追体験してしまうと。しかし師の導きによって現代に蘇っても安息を得られず、結局は時代を超えて彷徨い、さらに求め続ける、ということだと思うのですが。スケール感のある話がちょっとカルトっぽいテイストになってしまったのが残念。

私は正直言ってミラレパについて特に詳しいわけではないので、史実に対する忠実さ等については言及しづらいのですが、キャスティングや演出は悪くないですし、過去の舞台となるチベットの風景は荒涼としていて素朴な力強さを感じさせる映像でなかなか引き込まれました。ミラレパの思想的なものに共感するか否かはさておき、欲望、復讐、悔恨、彷徨といった魂の遍歴を描いたという意味ではなかなか力のこもった作品だと思います。アレハンドロ・ホドロフスキーの古典的名作『エル・トポ』(1969)に撃沈された方(これは私もやられました)は一度見ておいて損はないと思います。

ちなみに私がミラレパの名を初めて知ったのは白人悪がきラッパー・グループ『ビースティ・ボーイズ』のメンバー/アダム・ヤウチが1994年に「ミラレパ基金」を設立したときでした(ビースティ・ビーイズは大好きなグループなので)。この財団は非営利団体としてアメリカ、サンフランシスコを本部に国際慈悲と非暴力主義を広めるための人道的、政治的活動を若者が共感しやすい音楽、映画、イベントを通して展開しているようです。当方はこういった基金の活動とは関係はありませんが、ご興味のある方はWEBサイトがありますので一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。クラブイベントのレポート等があってなかなか楽しいサイトです。
・ミラレパ基金(http://www.milarepa.org/japan/milarepa.html)

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