No.84
タイトル
ロンドン・キルズ・ミー
(原題)
LONDON KILLS ME
監督
ハニフ・クレイシ
キャスト
ジャスティン・チャドウィック、スティーヴン・マッキントッシュ他
制作
1991年/イギリス
ジャンル ドラマ
上映時間
106分
評価
★★
<ストーリー>
ロンドンのストリート・キッズ、クリント(ジャスティン・チャドウィック)はドラッグ・ディーラーという危ない生活から抜け出すためにウェイターの仕事の面接を受ける。店のオーナーはクリントの汚い靴を見て「新しい靴を履いてくるなら」との条件付きでOKを出す。友人マフダイヴァー(スティーヴン・マッキントッシュ)が一儲け企むのを尻目に、一文無しのクリントは必死に靴を探し始める.....。

<コメント>
『マイ・ビューティフル・ランドレット』 (1985) や『サミー&ロージィ』(1987)の脚本で注目を浴びたハニフ・クレイシが1991年に撮った初監督作。90年代のロンドンを舞台にホームレスでドラッグ・ディーラーをしながらも、何とかまともに生きようとする若者を中心に描いた青春ドラマ。
公開当初は”仕事を得るために靴を捜し求める”みたいなコピーが強調されていたので、もうちょっとポップで笑えるテイストを想像していたのですが、「意外とストレートな感じだなー」と思ったのを覚えています。ストーリー的には特にひねりは無いので、登場人物のキャラクターや人間関係から青春の一ページを綴ったという感じです。

主人公の男性はひょろっとして頼りない感じですが、それがキャラクターには合っていると思います。少しおっちょこちょいで調子に乗りやすい面もありますが、基本的にはまじめで優しく、幼少時代の経験から孤独や寂しさを内包している部分もあります。見た目やファッションはかわいい感じで女性には受けそうですね。ただこの作品以外に出演作は無いようです。全体的な印象で言うとハニフ・クレイシの脚本は悪くないと思うのですが、演出がおとなしすぎるのか面白い人物が多い割には今ひとつインパクトに欠ける気がします。やっぱりこれは『マイ・ビューティフル・ランドレット』や『サミー&ロージィ』を撮ったスティーブン・フリアーズ監督あたりが得意とする設定かもしれません。主人公の過去や友人たちとの関係ももう少し深く描けていればよかったのではないかと思います。友人マグの扱い方も納得いかないところが多かったです。
後半、イギリスの田舎に繰り出すのですが、この場面の描写は牧歌的で静寂を感じさせる映像でとても美しいですね。またここでのエピソードは可笑しくも悲しくていかにもハニフ・クレイシ!見所です。ラストは、うーん、まあこんなものか(?)という感じです。中盤の起伏が少ないので爽快感もそれなりかも。

彼らが直面している現実や貧困さを描こうとする姿勢は伺えますが、視点が優しすぎるのか、主人公が発する「ロンドンを抜け出したい」という言葉が今ひとつ現実的に響いてきません。満足に靴もない生活の割にはひっ迫感に乏しく、「厳しい現実を明るく生き抜いている」という見方も出来るかもしれませんが、個人的には少しちぐはぐな感じがして、あまり感情移入は出来ませんでした。90年前後ってまだイギリスの経済も復活の兆しが見えていない頃(もしくは少し見え出した?)だと思いますが、社会状況の描写が少なく、当時のこの層の人々の状況をリアリティをもって描いているのかどうか判断しかねます。エネルギーが有り余ったティーンエイジャーでも無く、人生を達観してしまった20代でもないあたりが中途半端な感じがするのが残念でした。日本人で同世代の人はどう思うのかなー。
ちなみに作中流れる音楽は当時流行っていた『Renegade Soundwave』『Leftfield』『Mano Negra』『Bass-O-Matic』等々で、なかなか渋いところをついています。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送