No.108
タイトル
読書する女
(原題)
LA LECTRICE
監督
ミシェル・ドビル
キャスト
ミュウ・ミュウ、マリア・カザレス、クリスチャン・リュッシュ他
制作
1988年/フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
99分
評価
★★
<ストーリー>
主人公のコンスタンス(ミュウ・ミュウ)は大の読書好き。彼女はベッドで「読書する女」という本を読み始める。本の中のヒロイン・マリーの仕事は依頼人の家をたずねて本を読んで聞かせること。車椅子の少年や欲求不満の社長等、マリーは仕事先で個性的な人々と出会い、様々な体験を重ねていく。.....。

<コメント>
ベッドで夫にせがまれ出張朗読業を開業した女性の本を読んで聞かせる主人公のコンスタンス。その後物語は現実の世界と本の中の世界が微妙に交錯しながら進んでいきます。この構成は面白いですね。バックに流れるベートーヴェンのピアノソナタもいい感じ。読書する、というかつまりは"朗読家"という事なのですが、その仕事ゆえに様々な人々との出会いが描かれていくというのも、予想できる展開ではありますがリズムがあって飽きません。
特に印象に残ったのは下半身不随の少年にモーパッサンを聞かせるところ。少年が読み上げられる文章に自分の心情を重ね、心を乱されるあたり惹き込まれました。彼と目の見えない友人のジョエルの二人に話を聞かせるくだりも寓話的で美しい。また女っ気の無い社長との軽いコメディ・タッチのやり取りも絶妙。男がやたらと理論や賛美をぶちまけながらも結局は性的な満足を求めているあたり、フランス映画らしいアプローチで微笑ましい場面です。舞台となる男の部屋もデザイン的に洗練されていて最高。後ろにがくんと倒れる究極のロッキング・チェア(?)も一見の価値あり。
主人公役のミュウ・ミュウはまさにキュートの一言ですね。シルバーでショートの髪にブルー系の衣装が本当によく似合います。その丸くて大きな目のせいか、どちらかといとう現実や生活を感じさせる女優ではないので、キャラクター的にもあっていると思います。
ただ作品としては子供とのエピソードが中途半端に後味の悪い結果になったり、100歳を越えていると嘯く未亡人と絡むあたりから政治的な色が濃くなってきたり、単純に読書の魅力や愉しみが描かれている作品ではないところが賛否の分かれるところかもしれません。個人的にはもっと男女の関係に絞った展開の方が楽しめたかなーという感じです。本を読む行為が実際に彼女と恋人との間に変化をもたらしたり、本を通しての男性遍歴が彼女自身に変化を与えたり、その辺がもう少し深く描かれていれば良かったのですが。愛について理論を交わすのはこの監督の得意(というか志向)とするところですが、こういった設定の作品を見るとどうしてもベルンハルト・シュリンクの名作『朗読者』(いずれ映画化されるでしょう)や『蜘蛛女のキス』(1985)を思い出してしまいますので。そういえば作品中に蜘蛛が出てきますね!?
なおこの作品は1988年のフランス・ルイ・デリュック賞、モントリオール国際映画祭グランプリに輝きました。

<以下、ネタばれ注意!>
終盤のごたごたの後にあのラストとは…うーん、唸ってしまいます。支配階級に絡め取られたマリーに代わり、今度はコンスタンスが朗読家としてやっていくという決意表明なのかもしれませんが、ちょっと安易な気がしますね。コンスタンスもマリーも想像力に欠けるところがあって、要するに本を通して出会う人たちとの営みこそが必要なのではないかと思うと弱い終わり方でした。結局本や活字、言葉というものの力を最も心と身体に取り入れていたのは、将軍の未亡人とジョエル(二人とも目が見えない)だけだった気がします。

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