No.169
タイトル
殺し屋たちの挽歌
(原題)
THE HIT
監督
スティーヴン・フリアーズ
キャスト
ジョン・ハート、ティム・ロス、テレンス・スタンプ他
制作
1984年/イギリス
ジャンル ドラマ
上映時間
94分
評価
★★★
<ストーリー>
銀行強盗の仲間を裏切り、スペインに隠れ暮らす男(テレンス・スタンプ)。裁判から10年後、彼の元に2人の殺し屋が送り込まれる。男を誘拐し、女を巻き添えにした殺し屋たち4人は黒幕の待つパリへと向かう。もはや死ぬことを恐れない男とどうにか逃げようとする女、そして仕事を遂行しようとする殺し屋たちの間にさまざまな感情が行き交う.....。

<コメント>
『危険な関係』(1988)や『グリフターズ/詐欺師たち』(1990)等の作品で知られるスティーヴン・フリアーズ監督の作品。次作『マイ・ビューティフル・ランドレッド』(1985)をはじめとする”ロンドン3部作”に違わず、本作でも非情な世界に生きる男たちの生き様を、単なるハードボイルドにとどまらないリアリティを重視した映像で描いています。
物語のキーとなるのは、強盗仲間を裏切り、スペインで隠れ住む男。そしてそこに現れる二人の殺し屋。さらに途中で誘拐される女。そしてこの4人のパリまでの逃避行がロード・ムービー的に描かれます。設定としては、よく言えばそれぞれの思惑が絡んだ人間劇としてうってつけだし、悪く言えば利害関係を中心にしたありがちなものとも言えます。内容的には『The HIT』という原題、さらには『殺し屋たちの挽歌』というベタな邦題がつけられている割にはハードな感じは控えめです。個人的には名優ジョン・ハートの狂気度の少なさが物足りなく、中盤まで少しダラダラした感じだなー、思っていましたが、『コレクター』(1965)のテレンス・スタイプのどこか悟りを開いたような物腰と台詞や、若さ溢れるもう一人の殺し屋を演じる、本当に初々しいティム・ロスのキャラクターが絡み合ってくるうちに、結構引き込まれてしまいました。
ジョン・ハートはどんな役(例えば『エレファント・マン』)をやっても”人間”を感じさせるので、クエンティン・タランティーノの『レザボア・ドッグス』に登場する殺し屋のような残虐性を求めるとおとなしく感じるかもしれませんが、そのあたりがこの監督の考えるリアリティのレベルが表出しているということなんでしょうね。そういう意味では前述の次作以降のような、もっと社会的なテーマの方がしっくりくるんだと思います。
冒頭のエリック・クラプトンの音楽や全編にフィーチャーされたパコ・デ・ルシアのギターは作品に独特の乾いた雰囲気を与えています。また、思惑を腹に抱えた人間たちとまったく違う次元で存在している荒涼とした美しい風景描写や、あくまでもクールな殺人・暴力描写も良いですね。しかし、殺し屋に普通ではありえないような残酷さや冷徹さを求めるのか、殺し屋だって人間だという可笑しさや哀しさを求めるのか、ここが好き嫌いの分かれ目かも。個人的には好きな俳優が出ているということもあって結構面白く見ましたが、それでも、まったく違う演出、キャスティングでも見たいなあと思ってしまいました。
ちなみにティム・ロスは本作でロンドンのローカル紙イブニングスタンダードの映画賞において最優秀新人賞を受賞しました。

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