No.166
タイトル
他人のそら似
(原題)
GROSSE FATIGUE
監督
ミシェル・ブラン
キャスト
ミシェル・ブラン、キャロル・ブーケ、フィリップ・ノワレ他
制作
1994年/フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
84分
評価
★★★★
<ストーリー>
人気コメディアンのミシェル(ミシェル・ブラン)は、ある日、全く身に覚えの無い罪で警察に連行される。さらに旧知の女友達からはレイプ犯呼ばわりされ、行きつけのバーでは突然殴られる始末。どうやら自分のニセモノがいるらしいことに気づき捕まえようと奔走するが、その間にも悪い出来事は止まらず.....。

<コメント>
『タキシード』(1986)でカンヌ映画祭の男優賞を制し、パトリス・ルコント監督の『仕立て屋の恋』(1989)でも存在感を見せ付けたフランスの人気コメディ俳優、ミシェル・ブランが監督、脚本、主演(二役)を努めた作品。
作中、実在の俳優や映画監督の名前がちょくちょく出てきますが、中でもウッディ・アレンの名前が出てくることでもわかるように、主人公の神経症的な喋りや行動は彼を意識した感じです。全体的にはコメディなのですが、カーチェイスや宝石強盗の場面等、結構まじめに描かれていて、笑いそのものはあくまでも乾いています。加えて、ドタバタなだけのエピソードが無い分、ニセモノに翻弄される主人公に感情移入してしまうと結構やりきれない気分に。ミッシェル・ブランの顔がウッディアレンに比べると少し困り顔度合いが高いこともあるかも知れません(笑)。しかし、『仕立て屋の恋』ではコメディとは180度違うストーカー的なキャラクターが似合っているなと思いましたが、さほど表情が豊かでない中で、いろんな役をこなせるという意味ではすごい俳優といえると思います。
序盤、少し複雑な展開に戸惑いますが、それでも最終的にきちっと語りつくすあたりなかなかの手腕。恋人役に背の高いキャロル・ブーケを持ってきたキャスティングもいいですね。彼女とのデコボコ具合が、湿り気を抑えてくれています。
主人公はほとんど救われることはないのですが、その冷徹なまでの視点の意味はラストでわかります。それまでの哀しいぐらい真面目で自虐的な態度や視点も、結局ミッシェルのフランス映画に対する愛情ゆえの客観的視点であったことが判明します。宝石強盗の場面も彼女に濃厚な愛の台詞を吐かせることによって、この作品が間違いなく”映画”であることを表明しています。そしてこの視点、距離感が最終的に監督が伝えたかった思いに集約されていくのです。単純に見た目が似た二人が繰り広げる七転八倒のコメディとしてみると悲壮感が残りますが、ミッシェルの偽者が吐く言葉をなぞりながら、フランス映画への愛情を感じることが出来れば味わい深い作品であると思います。
ちなみに本作は1994年のカンヌ国際映画祭でも大好評でパルム・ドールにノミネート(受賞したのはタランティーノの『パルプ・フィクション』)、脚本賞・フランス映画高等技術委員会賞を受賞しました。

<以下、ネタばれ注意!>
終盤、名優フィリップ・ノワレが実名で登場、死に行くフランス映画を批判し慈しみます。内容はちょっとストレートすぎる気もしますが、彼らを拾うのがアメリカに絶望し逃亡したポランスキーというあたりで思わずにやり。そしてラストシーンで、最終的にまた映画の中に戻っていく二人。ささやかながら希望を感じさせる終わり方はミシェルの情熱?それとも夢?

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