No.91
タイトル
錆びた黄金
(原題)
EUREKA
監督
ニコラス・ローグ
キャスト
ジーン・ハックマン、ミッキー・ローク、ルトガー・ハウアー他
制作
1981年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
136分
評価
★★
<ストーリー>
カナダの山男ジャック(ジーン・ハックマン)は金鉱を掘り当てるのに人生を懸けてきた男。ある日雪山で彼は金を発見し、一躍大金持ちとなる。カリビアに豪邸を建て妻と娘の三人で暮らす彼だったが、やがて周りに不穏な動きをする男たちが付きまとい始める.....。

<コメント>
宇宙人役のデヴィド・ボウイが強烈なインパクトだった『地球に落ちてきた男』(1976)等で知られる映像の魔術師ニコラス・ローグ監督が演技派ジーン・ハックマンと組んだ作品。金鉱を掘り当てるという夢を追い続けた結果、一財産を築いた男とその財産と娘を巡る人間たちの思惑を描いたドラマです。

人間の欲望や業を独特の映像で世紀末的に表現するニコラス・ローグ監督。この作品でも随所に幻想的なイメージ・ショットがはさみこまれ、同じ様なテーマを扱った作品の中と比べても一味違うテイストになっています。雪中の真っ白な世界で人間同士の欲望がぶつかり合うシーンや退廃的でスペイシー(?)な拳銃自殺のシーン等、冒頭部分は結構引き込まれました。キャスティングも良いです。ジーン・ハックマンは”夢を追う”という欲望にとらわれ、翻弄されていく主人公をリアリティを持って演じています。娘と資産を狙うルトガー・ハウアーにしても土地を買収しようとする一派の弁護士を演じるミッキー・ロークにしてもインパクトはジーン・ハックマンに及びませんが、思惑を胸に秘めた、これまた欲望にとらわれた男をうまく演じています。当たり前ですが二人ともずいぶん若いですね。

しかし、残念ながら作品の全体的な印象としては少しちぐはぐな感じが否めませんでした。夢を実現した男とその男の財産と娘を巡る物語なわけですが、テーマとして描きたかったのが夢を実現させてしまったがゆえに人生に生きがいを見出せない男が迎えた皮肉な人生の顛末なのか、財産を巡る人間同士の狡猾で欺瞞に満ちた駆け引きなのか、ちょっとどっちつかずに終わってしまった感じです。
また演出的には後半の裁判の部分が少しだれる感じがしました。まあここでのやり取りも面白いと言えば面白いのですが、それまでの流れから考えると少し勢いがそがれてしまった感じです。前半、主人公と関わりを持つ等、出番の多い占い師の女の扱いももったいない気がします。どうせなら彼女をもっと絡めて幻想的な映像をたくさん盛り込んでも良かったのではないかと思います。結果的に単純にヒューマン・ドラマを求める人たちにはわかりにくく、ニコラス・ローグ監督のファンは物足りない作品になってしまったのはないでしょうか。個人的には、夢を追い求め実現してしまった男の虚無とその夢を実現することによって得た財産に群がる人々の欲望が輪廻のようにつながり、繰り返しながらすべてが破滅に向かう、みたいなおどろおどろしさがもっと伝わってくれば良かったのではないかと思います。主人公の意思が反映されたセリフが繰り返される部分があるので、そういう狙いもあったのではないかと思うのですが。

登場人物の背景や舞台設定等工夫されているのはわかりますし、死に対するイメージ・描写等、挿入される幻想的な映像も(やりすぎの部分もあるものの)インパクトはあるのですが、”人間の欲望”というテーマと対峙するにはこじんまりとまとまりすぎた気がします。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送