No.263
タイトル
恋人たちの食卓
(原題)
飲食男女
監督
アン・リー
脚本
ジェイムズ・シェイマス、ウォン・フイリン
キャスト
ロン・ション、ヤン・クイメイ、ワン・ユーウェン他
制作
1994年/台湾
ジャンル ドラマ
上映時間
125分
評価
★★★★★
<ストーリー>
敬虔なクリスチャンで恋に臆病な教師の長女。才色兼備だがいつも恋に破れる航空会社勤務の次女。ファースト・フードでバイトしている女子大生の無邪気な三女。そんな三者三様の三姉妹を男手ひとつで育て上げた父親は、台湾最高峰のグランドホテルの元シェフ。父親の作る色鮮やかな料理を中心にそれぞれの日常が動き出す.....。

<コメント>
現在世界で最も有名な台湾人のひとりと言われ、映画監督としても確固たる地位を確立したアン・リー監督作品。本作は『推手』(1991)、『ウェディング・バンケット』(1993)に続く”父親三部作”と呼ばれるシリーズの最後の作品。三姉妹と一緒に暮らす父親の受難の日々を描いています。

冒頭からとにかく料理を作る場面が頻繁に登場するのですが、そのどれもが食欲をそそります。それだけでもこの作品を見る価値はあるのではないでしょうか。やはり同じように料理の場面がよく出てくる村上春樹の小説を思い出しました。しかも本作の主人公は筋金入りの料理人。その主人公の父親に”台湾料理は中国料理と混ざり合って、なくなってしまった”と語らせるあたり、アン・リー監督のメッセージはぶれないですね。途中ブラックアウトで何度も挿入される台湾の風景もこの国の勢いを感じさせます。父親が有名料理店のシェフということで、子供たちはその料理に慣れているのでしょうが、家族の晩餐シーンでは誰も美味しいとか素晴らしいとか料理をほめる言葉をほとんど発しないところも面白いです。観ている方にとっては間違いなくどれも素晴らしい料理なんですけどね。雑談しながら残り物を淡々とタッパーに移す場面等、量が多いのもあるとは言え「何で食べないのー?」みたいな。

ストーリーは未婚の三姉妹がそれぞれ恋に落ちたり、仕事で悩んだり、でもってそれぞれに父親との確執があるという、正統派のホームドラマものなんですが、料理を中心にそれぞれのエピソードが鮮やかに描かれていて楽しめます。三姉妹のキャラクターの設定もうまい。娘たちは好きな人と結婚していくわけですから、家族の崩壊ではないのですが、それでも家族が形を失っていく過程、それに伴って浮き彫りになるつながり、そういうものをコミカルに、艶やかに、それでいてさらっと見せるのはやはり監督の手腕でしょうね。家族の絆、他人との絆、そしてそれぞれの人生、じんわりと心に残る作品です。邦題を見ると単なる恋愛ものと思ってしまうのが残念。

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