No.79
タイトル
ドゥ・ザ・ライト・シング
(原題)
DO THE RIGHT THING
監督
スパイク・リー
キャスト
スパイク・リー、ダニー・アイエロ、ジョン・タトゥーロ、ビル・ナン他
制作
1989年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
120分
評価
★★★★★
<ストーリー>
いつものように小さなラジオ局“ウィ・ラブ・レイディオ”をひとりで切り盛りするDJ(サミュエル・L・ジャクソン)のモーニング・コールから一日が始まるブルックリンの黒人街。イタリア人親子が経営するピザ屋で働くムーキー(スパイク・リー)も嫌々ながら仕事に出かける。街はいつもと変わらない様子だったが、その年一番の暑さを記録するほどとなったその日、様々な人間関係の中で摩擦が起こり始める.....。

<コメント>
黒人の立場・差別・自立等を映画を通して訴え続ける扇動者スパイク・リー監督が1989年に世に送り出した傑作。『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』(1985)のようなスマートな作品(もちろん腰は太い)で評論家や知識人をひきつけておいて、メジャーから『スクールデイズ』(1988)は放って大衆の支持も得て、皆が近づいてきたところにこの爆弾をボカン!!!うーん、戦略的です。
本作品は1989年アカデミー賞助演男優賞、脚本賞にノミネートされるも受賞できず、これについては非難の声も上がりましたが、個人的にはどうでもいいです。『マルコムX』以後は家族が焦点になることも増え、少しノスタルジックになった分おとなしくなった感じのあるスパイク・リー監督ですが、この作品が公開されてから『マルコムX』を撮るあたりまでは本当に発言力も影響力もありました。

同じくヒップ・ホップ界の扇動者パブリック・エネミーの音楽から始まる序盤は、主人公ムーキーと彼を取り巻く人間模様が緊張感を漂わせながらも滑稽に描かれていて笑えます。これは演技派ダニー・アイエロと個性派ジャンカルロ・エスポジートの功績大。しかしあまりにも強い太陽の熱はアスファルトを焼くだけでなく、人々の摩擦にも火をつけ、中盤から徐々に雲行きが怪しくなります。作中よく現れる、黒人に黒人の悪口を語らせ、一体どっちの見方なんだと思わせるような手法はいかにもスパイク・リー監督ならではの煽り方。後半はテンションも上がり緊張感を保ったまま最後まで一気に見せます。この圧倒的なスピード感の前に観客であり、さらに日本人でもある我々はもはや呆然と立ち尽くす、いや座り尽くすしかありません(もちろんアジア人という意味では我々も決して部外者ではないですが)。
私がこの映画を高く評価するのは、これだけの問題・対立・すれ違いをストレートにさらけ出しながら、見終わった後には不思議と前向きで力強いカタルシスを与えてくれるからです。これは監督の演出とアーネスト・ディッカーソンのカメラワークと映像が黒人が持つ躍動感をしっかりと捉え、それに音楽を効果的に絡めることによって、黒人のコミュニティが持つ一体感や力強さを描き出しているからではないかと思います(蛇足ですが、見るだけで思わず喉が鳴ってしまうビールを飲む場面やピザを食べる場面の描写も活き活きとした生活感を出すのに一役買っていると思います)。
様々な意味を含めてアメリカに、そして映画界に大きな一石を投じるインパクトを持ちながら、リズミカルでスタイリッシュな映像やキャスティングの妙で飽きさせないこの作品を、私達は繰り返し鑑賞し、一体何がライト・シング(=正しい事)なのか繰り返し考えさせられることでしょう。

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