No.250
タイトル
ドグラ・マグラ
(原題)
ドグラ・マグラ
監督
松本俊夫
脚本
松本俊夫、大和屋竺
キャスト
桂枝雀、室田日出男、松田洋治、三沢恵里他
制作
1988年/日本
ジャンル ミステリー
上映時間
109分
評価
★★★★★
<ストーリー>
大正末期の九州医大精神科病棟。記憶喪失の少年(松田洋治)と彼を見守る法医学教授(室田日出男)。少年の脳裏に眠る猟奇的体験をめぐって、精神科の博士(桂枝雀)が謎の死を遂げ、奇怪な因縁に彩られた殺人事件が次々と露出し始める。そして消えた記憶は何故か胎児を経て遥か唐の時代の伝説にまで遡っていく.....。

<コメント>
日本を代表する幻想作家・夢野久作が残した”伝説の奇書”を『薔薇の葬列』(1969)、『修羅』(1971)等の松本俊夫監督が映像化した作品。主人公の青年には80年代にテレビドラマで活躍していた松田洋治、法医学の教授2人に桂枝雀、室田日出男を配し、幻想探偵小説の金字塔ともいえる原作の世界観を巧みに映像化しています。
公開当時は物語の軸になるマッド・サイエンティスト役に桂枝雀という、ほとんど反則技のキャスティングと、大好きだったテクノバンド『ヒカシュー』や『ゲルニカ』のジャケットデザイン等を手がけていた太田螢一氏によるポスターが強烈な印象だったのを覚えています。夢野久作は好きな作家ですし、やはり『ドグラ・マグラ』はお気に入りの作品なのですが、大体そういう個人的な思い入れが強い小説が映画化されるとコケるんですよね。ただ、本作に関しては、前述のキャスティングとポスターだけで、これはすごいかも、と思いました。で、実際に観てさらに納得。さすがに原作の入れ子構造や歯車の外れ具合が半端ではないだけに、小説を越えるのは難しいですが、映画として十分楽しめました。さすが実験映画を撮り続けてきた松本監督です。夢と現実、過去と未来、真実と虚構、すべての境界線がメビウスの輪のようにねじれています。サスペンスの体を保ちながら、段々と狂気を増していく物語に自分の脳髄がかき回されるようです。まさに脳髄が仕掛けたわなに脳髄がだまされる仕組み。その仕組みから発生する混乱や疑惑がやがて快感になってくる不思議。もう一時間ぐらい長くてもよかったかもしれません。
ちょっと残念なのは、当時『家族ゲーム』(1983・TV)での勢いがまだまだあった松田洋治が、今見ると印象が薄いところ。まあ、それぐらい桂枝雀と室田日出男の二人の演技が火花を散らしていたということだと思います。観る人の好き嫌いがハッキリする作品だと思いますが、天才で孤高の落語家・桂枝雀氏の芸の幅広さを証明したという意味も込めて★は満点とさせていただきました。

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