No.13
タイトル
マッチ工場の少女
(原題)
THE MATCH FACTORY GIRL
監督
アキ・カウリスマキ 
制作
1990年/フィンランド
ジャンル ドラマ
上映時間
70分
評価
★★★
<ストーリー>
マッチ工場で働くイリス(カティ・オウティネン)は、母と義父の住む狭いアパートに同居し、細々と暮らしていた。ある給料日、イリスは派手なドレスを買い、残りを母に渡したが、ドレスを買ったのがばれてしまい、返品を命じられる。それでもそのドレスを着て酒場に繰り出したイリスは一人の男と出会う.......。


<コメント>
貧困な日常を時にシニカルなユーモアを交え、淡々と切り取っていくアキ・カウリスマキ監督の作品です。ここでも、幸せを夢見る工場勤めの少女(ではないです、しいて言えばおばさん)の決して裕福でない日常が独特の視点で綴られています。
確か、日本で公開された当時は、”次々と少女に降りかかる不幸”みたいな説明があったような気がしますが、それはちょっと大げさな気がします。まあ、確かに主人公はどう考えても幸せではなさそうですが.....。

アキ・カウリスマキ監督は、例えば少女がカフェで飲み物を飲んでいる場面や、母親がたばこをふかす場面等、結構カメラを長く回します。ところが、少女が男と知りあって一夜を共にするところになると、愛し合う描写等は無く、いきなり朝になったりします。
この辺の演出が、よけいに日常をシニカルに感じさせる要因のひとつではないかと思います。やっぱり、特別な出来事(良いことも悪いことも含めて)よりも、そうでない時間の方が圧倒的に長いですもんね、人生は。とはいいながら、この独特の”間”が悲哀だけでなくおかしみを感じさせるんですよ、この人は。

主人公を演じるカティ・オウティネンはどこか不気味でどこかおかしみのあるヒロインを淡々と演じています。彼女は彼の作品には欠かせない存在と言っていいぐらい不思議な”味”のある女優だと思います。終盤なんてやっていることはとんでもないことなのですが、なぜか応援したくなります。この辺りの視点はこの監督ならではですね。
今回のラストはかなりシビアな結果になりますが、途中何度か挿入される切ない詞・メロディーの歌とあいまって、なにかカタルシスのようなものを感じました。この人の作品は登場人物が寡黙な分、音楽がとても印象に残ります。

ちなみにビデオには、オリジナル予告編の他に、同監督の短編『ロッキー6』と『スルー・ザ・ワイアー』の2本がおまけとしてついています。『ロッキー6』の方はドタバタのコメディ。『スルー・ザ・ワイアー』の方は映像的にはジム・ジャームッシュ・ミーツ・アキ・カウリスマキといった感じのクールな映像です。監督のファンの方は一見の価値有りです。

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