『猿王』

きました。ネット通販で買った漫画。「猿王」(仲能健児/青林工藝舎)。この漫画、1994年の春に雑誌「モーニング」にて連載されていたもの。当時この作品を読んで、その独特の画風、世界観、そしてタイトルが頭にこびりつき、以降、ずっと単行本を探していたのですが、なぜか手に入りませんでした。あれから10年、先日何かの拍子にふと思い出し、ネットで検索してみたら出てきました。何と今年の3月に復刊されていたんです。で、早速注文した次第。評論家の呉智英氏の解説によると、連載後すぐに単行本化されるも、オウム事件等があり、その関係で当時は話題にならなかった(しにくかった)のではないかとのこと。納得。
”願いは叶う”、と言いますが、今、実際にこうやって「猿王」を手にとって読んでいると何とも感慨深いというか、不思議な感覚にとらわれます。まさにこうなることが決まっていたような感じ。この作品自体もそういう大きな自然の流れや神の存在のようなものがテーマとなっています。

「猿王」を読んで伝わってくるのは”異”ということです。登場人物の顔がみんな顎がでかい”異形”。日常の中に”異界”からの生物が紛れ込み、次々と人が死んでいく”異常”。さまざまな出来事に翻弄される主人公は全く普通に暮らしていただけだと言いますが、そもそも彼は”異邦人”なのです。そんな、”異”が重なり、世界がねじれていく中で、最終的にそのねじれを修正する巨大な力。その場面の”異様”さには圧倒されるばかりでした。

先般このコラムで、物事は自然にバランスする、と書いたばかりですが、まさに何千年という時の流れの中で、世界がバランスする様が描かれていると思います。私は特定の宗教を信じているわけではありませんし、インド哲学に傾倒しているわけでもありませんが、自分というものは存在しないし、すべては私たちが生まれる前から決まっていること、なのかも。
これ映画化しても面白いと思います。ラストシーンは間違いなくものすごいインパクトになるはずです。監督はやっぱり『薔薇の葬列』、『ドグラ・マグラ』の松本俊夫監督かなあ。

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