シド・バレットに関する書籍ではロック・ジャーナリストのマイク・アトキンソンが書いた評伝『クレイジー・ダイアモンド/シド・バレット』(水声社)が有名です。この本はシド・バレットの闇の部分にも結構焦点が当てられていて、彼の人間性と歩んだ人生についてかなり正確に書かれているのではないかと思います。それに比べるとDVDのドキュメンタリーは、他のメンバーや周辺人物が一様に彼の才能を認めて尊敬する発言をしているのが興味深いところ。
評伝では隠遁生活を送るシドの近影写真も載せていましたが(これが全く別人...)、DVDではその辺まであまり踏み込んでいないのが嬉しかったです。
シドがいなくなってからも、メンバー間の確執てんこ盛りのピンク・フロイドでしたが、ここではメンバー全員がシドに敬意を払っている様子が伺えて新鮮でした(インタビューの場所は別々のようですが)。
おまけとして付いている特典映像のインタビューで、一時期ピンク・フロイドへの貢献度も高かったメンバーであるギタリストのデヴィッド・ギルモアが、シドに捧げた曲「WISH YOU WERE HERE」に関し、「(この曲は)いつも特別な思いで演奏している」と発言する場面、グッときます...。
しかし、一つ残念なことも。そのインタビューの中で、デヴィッド・ギルモアが「WISH YOU WERE HERE」を「ちょっと弾いてみようか」と試みる場面があるんですね。ところが、お気に入りのギターが見つからず、結局別のギターでさわりを弾いただけで終わるんです。「こらっインタビュアー、お前もっと気合入れて探さんかいっ」、と突っ込みたくなる瞬間でした(笑)。最後まで聴きたかったなあ。