『映画館という場所』

年の7月から1年間の期間限定企画で、夫婦のどちらかが50歳以上なら2人で2000円で映画観賞ができるキャンペーンが行われています。映画が一人1000円。このぐらいの値段がちょうどいいのではないか、という事は以前このコラムでも書きました。最近では、他にもカップル割引の日や、クレジットカードの提示による割引、独自クーポンの発行等、映画を安く見るためのサービスはどんどん充実しているように思います。
もともと高すぎたのではないか、という議論はひとまず置いておくとして、そういうサービスの充実自体は大変よいことだと思いますが問題が一つ。これは映画に限ったことではありませんが、値段の安さ、割安感を理由に新規のお客さんが増えることによってマナーの低下が懸念されるということです。
もちろんそういう方ばかりではないと思いますし、価格ばかりが問題なのではありません。しかし、例えば飲食店で、テレビ等のマス・メディアで放映されたことによって有名になり、ある意味ミーハーなお客さんが瞬間的に増え、それによって常連さんが離れていったり、数をこなすために味が落ちたりするのはよくある話だと思います。映画館でも、映画そのものを好きなのではなく、安さやお得感を求めるお客さんが増えると、結果的に上映そのものや映画館独特の雰囲気が壊されてしまう可能性があるのではないかと思います。

第三舞台という劇団を主宰していらっしゃる鴻上尚史さんが、毎回公演の際に配っていた手書きの文章をまとめた「鴻上尚史のごあいさつ1981-2004」(角川書店)という書籍が最近発売されたのですが、その中で鴻上さんは、自分が映画ではなくて演劇を選んだ理由のひとつとして、「もはや、映画館では、静かに見ることは不可能だろうという判断があります。映画館は、(劇場と自宅の区別のつかない人種を)ふせぎきれないだろうと僕は思っています」と書いていらっしゃいます。さらに、自身の劇団の公演中におしゃべりをする人がいたら殴っていいと(笑)。殴ってもいい、というのは冗談としても(ご本人は本気だと思いますが)、残念ながら鴻上さんの予言は当たりつつあるようです。

冒頭に挙げたような制度は、映画館に対する敷居を低くするという意味では大事だと思いますが、それらのサービスによって昨今の映画館におけるマナーは決して良くはなっていない気がします。
もちろん、できるだけそういう行為を行わないようにしたり、あまりにひどい場合は周りの人がちゃんと注意する等、見る側が注意すべき点もありますが、映画館側も配慮してほしいですね。売店での商品に関しても、食べる時に音の出るポテトチップスの類は避けるとか、思い切って飲食の持込を禁止するとか。公共空間の場合は別ですが、民間施設の場合は、その場の雰囲気やマナーを保つのは、やはり場の提供者側にかなりの責任があると思います。
逆にそういう運営に関して、それぞれの映画館が独自の色を打ち出せば、それは要するに娯楽を楽しむ際の空間の選択肢を広げているわけですから、多少うるさくてもいいから何か食べながら、話をしながら映画を見たい人、多少高くてもいいからまるで自分の部屋にいるような感覚で映画を見たい人等、いろんなニーズを持った人を映画館に呼ぶことが出来、結果的に市場は広がるのではないかと思いますが。

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