『復活の行方』

般、このコラムで、復活した音楽TV番組「ベストヒットUSA」についていろいろ書きました。復活したこと自体はもちろん嬉しいのですが、ちょっと疑問も。それぞれのコーナーのタイトル画面が今の時代を感じさせるものになっていたり、多少新しい試みもあったりするとは言え、基本的には以前とほとんど同じ内容なんですよね。で、こういう風に昔流行ったものを、あからさまに復活させることが果たして良いことなのかどうか。

例えば往年の名アニメ『キャシャーン』も映画としてリメイクされましたよね。やはり世代的にはかなり好きなアニメでしたが、それが実写で復活するのが果たして嬉しいことなのかどうか。私はまだ見ていないので何とも言えませんが、いい大人が「いやー、実写版は映像がすごいよ」とか「物語自体はアニメより影があって、大人のドラマに仕上がっているね」とか言っているのかと思うとちょっと...。もちろん、高々アニメ、と片付ける気持ちは毛頭ありませんが、”キャシャーン”というキャラクターやストーリー、映像の技術がどうのこうのということじゃなくて、”自分があの年頃に出会った、そして見た”と言うことが大事なんじゃないかなあと。ガンダムもそうですね。私はバリバリのガンダム世代ですが、最初のガンダム以降のバージョン(!多すぎ)を見たことがありません。初期のガンダムの映画なんかはたまに見ますけどね。他のバージョンも見れば見たでそれなりに楽しめるのだとは思いますが。まあ時代を超えて生き残るためにはその時代に合わせた変化を遂げることはむしろ不可欠だと思います。そういう努力無しに、”変わらない”というだけで生き残り続けるのはあまりにも難しいことです。けれども、全くゼロから同じように名作を作るというのは、もっともっと難しいわけで、それを避けて通っていたらクリエイティブも何も無いと思います。
そうは言っても楽しんだもの勝ちというところはあると思いますので、私もベストヒット・USAの復活を喜んでいるわけですが(ただ、やっぱり途中のCMはブリジストンの”レグノ”が良かったなあ。緊張感があって)。

現代アートのチアリーダー、山口裕美さんの著書『現代アート入門の入門』の中で、アーティストの中村ケンゴさんは、日本人が印象派の絵画を好きな理由について「感受性が強い10代に出会う音楽が、その人のその後の音楽の好き嫌いを決定してしまうように、明治維新以後、日本人の多くが実物を初めて見たのが印象派や後期印象派だったから」だと話していました。なるほどそうかもしれませんね。だから私も内容がどうなろうと、中学生の頃に、夜中に姉にたたき起こされ、眠い目をこすりながら見たこの番組のことが、今でも強烈に好きなのかもしれません。

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