『Last & Lost』

ム・クルーズ主演の『ラスト・サムライ』がどえらい人気のようです。トム・クルーズの演技が素晴らしいとか、共演者の渡辺謙が日本人俳優として史上4人目のオスカー候補だとか、日本の文化・歴史描写が非常に的確だとか、いろいろ話題に事欠かない作品ですが、イラクへの自衛隊派遣の時期と重なると少し疑いたくなる気もしますねー。”ショウ・ザ・フラッグ”じゃないけれど、「お前達も昔はこんなに勇敢な兵士だったんだろう」みたいなメッセージだったりして。問題が問題だけに、映画1本で国民感情が大きく左右されることは無いと思いますが、援護射撃と考えればそのくらいのことは平気でやる国ですからねえ、アメリカは。
まあ、いずれにしても、日本人が、そしてその魂が誇り高く描かれているのならそれに越したことは無いです。いろんな価値観を認め合うには、まずお互いの文化や習慣をきちんと理解する必要があるわけですから。作品自体はもちろん期待してます。

ただ、ちょっと視点を変えると別の不安もよぎりますね。ある知人が言いました。
「『ラスト・サムライ』では時代考証や歴史検証がちゃんとしているから、逆に日本の国内で放送されているようなテレビの時代劇の曖昧さが表に出て、テレビ業界の人なんかは困っているらしいよ」。これに関しては、「時代劇にそれほど明確な文化・生活描写を求めている人はあんまりいないと思うし、要は勧善懲悪の物語で楽しめればいいわけだからそこまで気にしなくても」、と笑っていたのですが、では私たちは本当に正しい日本の姿を知っていると言えるのだろうかということです。特に気になるのは”過去”ではなく”現在”について。過去の歴史というのは視点や立場等によって解釈が変わりますし、それについて語る私たちはほとんどがその時代に生きていたわけではありません。しかし、現在は今まさに自分が生きている世界。なかなか客観的な視点からは見られないし、ルールや常識だけでは割り切れないリアリティがある。
ということで、『ラスト・サムライ』も見たいけれど、同じく日本が舞台の映画で注目しているのはソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』。
まだ未見ではありますが、本作では日本へCM撮影にやって来た中年のハリウッド・スターが異国・トーキョーで感じる違和感と孤独感が表現されているらしいです。彼女が現在のトーキョーをどういう風に描くのか、そしてその映像を見た私達はどのような感情を揺り動かされるのか。映像そのものよりも、その感情の間にある差異こそ、今、見て感じるべきものであるように思われます。

・「ロスト・イン・トランスレーション」
http://www.v2records.co.jp/special/o011_sc/030804/

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