『第56回カンヌ映画祭』

56回カンヌ映画祭が閉幕しました。最高賞パルムドールと監督賞を受賞したのはアメリカのガス・ヴァン・サント監督。今年は新型肺炎やイラク戦の影響によるテロの脅威の下での開催となりましたが、マスコミも「普段通りのカンヌ」と報じる等、至って平和のうちに幕を閉じたようです。ガス・ヴァン・サント監督もインタビューで「反米感情がなかったのはうれしい驚きだった」と語っていましたが、これに関しては、まあ、そもそも政治的な発言をするような出席者が少なかったと思いますし、受賞作「Elephant」はアメリカの高校の銃乱射事件を描いたものですから、受賞自体に意味があると取れなくもないですが。
ガス・ヴァン・サント監督はアメリカの精神的な闇の部分を描き続けていますが、個人的には『グッド・ウィル・ハンティング』以外はあんまり評価していないです。いつも何かしら突出しようとしている素振りが伺えて、演出に無理があるような感じがするんですよねー。しかし今回は米国の高校内での暴力を深く掘り下げた作品ということなので、久しぶりに期待しています。

カンヌ関連ではもうひとつ印象に残った作品がありました。それはヴィンセント・ギャロの『ブラウン・バニー』。これは赤裸々な性描写もあって賛否両論に分かれたらしいです。いろいろとニュースの記事を読んでいると、本人はかなり落ち込んでいて「もう二度と映画は撮らない」とか「出資者におわびしたい」とか発言しているようで、”両論”とは言え、批判的な意見の方が多かったのかもしれませんね。しかし、繊細なナルシストで自身のことしか語れないギャロの作品を、芸術的な観点や映画の枠の中で語ること自体あまり意味が無い気がします。「バッファロー'66」は個人的にもめちゃくちゃ好きな作品ですが、続けてああいう作品を彼に求めたのだとしたら、それはなかなか酷なことでしょう。別に悪口を言っているわけではなく、ギャロのいいところは、私的な体験や感情を自身の独特な美意識に基づいて恥ずかしげもなく表出させることができるところだと思っているので、彼の作り出す作品はもともと賛否分かれるのが当たり前だと考えるからです。カンヌでの反応を聞いて、逆にギャロの作品を見たくなりました。「もう映画は二度と撮らない」といっているけれど、いつかやっぱりまた撮るんだろうなー。

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