【 コメント 】
『不完全な二人』(2005)の諏訪敦彦監督と、『可愛いだけじゃダメかしら』(1993)、『イヴォンヌの香り』(1994)などで知られるフランスの名優イポリット・ジラルドとの共同監督作品。離婚を決意した夫婦の間で揺れる少女の心をファンタジックな絵本のように描写したドラマです。
舞台はフランス。日本人の母親とフランス人の父親の元に生まれたユキ(ノエ・サンピ)は、9歳の女の子。ある日、母親から、フランス人の父と別れるから、一緒に日本に住もうと持ちかけられるが、両親が離婚すると知ったユキはショックを受け、それを受け入れられない。そこでユキは同じく両親が離婚した親友のニナとともに、両親を仲直りさせる策を考える。しかし結局は上手くいかず、二人で一緒に家出をし、森に向かう。そしてそこでユキは不思議な経験をする...という物語。
諏訪監督作品ではおなじみの即興演出によって独特の間が生まれ、全体的には練りこまれたドラマを見ているというよりも、主人公ユキの視点に寄り添って同じ時間を過ごしているような感覚になります。本作でとにかく印象的なのは、ユキを演じるノエ・サンピの純粋さとかわいらしさ。コレが本作のすべてといっては言いすぎでしょうか。たどたどしくお箸を使うユキ、両手を合わせてお祈りするユキ、彼女のしぐさは本当に愛らしい。そんなユキの両親は離婚を決め、親友ニノの両親は離婚済み。本作では、夫婦間の関係は離婚もやむなし、そして子供はそれに従うしかない、という立場です。
子供はあくまでも大人以前の存在、というあたりがいかにもフランス的で、ここが賛否分かれるところかもしれませんが、子供は子供でちゃんと大人に意見を言える文化があるようですし、終盤のユキの成長を見ていると、大人の事情に関わらず子供は子供の世界があり、そしてしっかりと大人の世界の出来事も受け止められるんだ、というある種の清清しさが伝わってきます。大人向けの絵本を読んだような優しい気持ちになる作品です。
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