No.126
タイトル
西部戦線異状なし
(原題)
ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT
監督
リュイス・マイルストン
キャスト
ルー・エアーズ、ルイス・ウォルハイム、ジョン・レイ他
制作
1930年/アメリカ
ジャンル 戦争ドラマ
上映時間
100分
評価
★★★★★
<ストーリー>
第一次大戦下のドイツ。学校の教師から志願を促され、理想に燃えた若者たちは、こぞって軍隊へと志願する。しかし、厳しい訓練を受けた末に戦場に送り出された彼らに待っていたものは、容赦ない戦争の過酷な現実だけだった.....。

<コメント>
私が『西部戦線異状なし』を最初に見たのはテレビでした。おそらく今回ご紹介する劇場用のものではなく、デルバート・マン監督(アカデミー賞4部門に輝いた『マーティ』(1955)等)が製作したイギリスのテレビ用の作品ではないかと思いますが、はっきりと覚えているのはラストシーンぐらいなので定かではありません。
当時、私はまだ小学生か中学生で、同じくテレビでよく放映されていた戦争アクション映画(『ナバロンの要塞』(1961)、『ワイルド・ギース』(1978)等)を興奮しながら見ていたものです。戦車のプラモデルなんかもよく作っていましたね。劇場用としては『遠すぎた橋』(1977)が話題になったのを覚えていますが、映画の雑誌なんかでも”史上最高90億ドルの制作費”やショーン・コネリーをはじめとする”豪華キャスト”等を中心に”戦争アクション大作”として取り上げられる等、結構娯楽映画的に扱われていたような記憶があります。いずれにしても、個人的にも大好きな戦争映画でしたが、『西部戦線異状なし』を見てからは、戦争映画に対する考え方、いや戦争というものに対する考え方そのものが変わった気がします。

冒頭、重々しい扉を開いた先に姿を現す軍隊、そして軍隊の行進を背景にした教師の姿、何とも示唆的です。そして最初に驚かされるのが学生たちを前に独裁者の如く立ちはだかり、声高に演説を行う教師の言葉。「諸君に志願をすすめているのではない」と言いながら、一方では「個人的な事情は言うべきでない」とたしなめる。これほどまでに欺瞞に溢れ、人を悪しき道に導く言葉があるでしょうか。そしてさらにショックなのは、その巧みな言葉に操られるままに意気揚々と戦場に繰り出す若者たちの姿。彼らの希望に満ち溢れた表情が逆に見る側の胸を締め付けます。そして予想通り待ち受ける過酷な現実。この作品では若者たちに焦点を当て、彼らの純粋な心情をリアルに描き出すことに成功しているため、戦闘シーンが特に生々しく感じられます。また、年代を感じさせるモノクロで少し荒い感じの画像が逆にドキュメンタリーぽくて、これまたリアルです。
そしてやはり忘れられないのは衝撃のラストシーン。そこにあるのはほとんど目的の無い殺人。戦争という背景を考慮したとしてもあまりにも無益な死。こんなに悲しい出来事を生み出し反省しながらも、今なお同じことを繰り返し続けるわれわれ人間とは一体どういう生き物なのかと問いたくなります。やはり戦争というものは(例え独裁者が引き起こしたものだとしても)、個人の思惑を超えた国家と国家の戦いであり、個人の命等取るに足らない扱いしかされないのだと認識せざるを得ません。怒りをあらわにする間も与えず、あっけなく幕を閉じるこのラストを見たときのどうしようもない違和感こそ、戦争の是非をあらためて問い直す第一歩です。

一般的にはレマルクの原作にはかなわないという声もあるようなので、原作を読もうと思いながらまだ実現していません。ぜひ読んでみたいと思います。
なお、この作品は1930年度アカデミー賞の作品賞と監督賞に輝きました。

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