No.326
タイトル
ニノの空
(原題)
WESTERN
監督
マニュエル・ポワリエ
脚本
マニュエル・ポワリエ、ジャン=フランソワ・ゴイエ
キャスト
セルジ・ロペス、サッシャ・ブルド他
制作
1997年/フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
125分
評価
★★★★
<ストーリー>
ヒッチハイクで乗せたニノ(サッシャ・ブルド)に車を盗まれ、職を失うことになったパコ(セルジ・ロペス)。奇妙な縁で出会った二人だったが、幸せに縁遠い男同士、次第に心を通わせるようになる。やがてパコが恋人に3週間の別離を告げられたのをきっかけに、二人はブルターニュ地方を西へとあてのない旅に出る.....。

<コメント>
フランス映画には、移民たちの人間関係を物語の中心にすえたマチュー・カソヴィッツ監督の『カフェ・オ・レ』(1993)や、自身が流浪の民・ロマの出身であり、ロマのコミュニティや人間関係を描いたトニー・ガトリフ監督の『モンド』(1995)、『ガッジョ・ディーロ』(1997)など、人種問題をベースにしながらもしっかりとドラマとして、映画として見ごたえのある秀作が少なくありません。本作もイタリア系ロシア人の少しお調子者のニノと、スペイン人でもスペイン系フランス人でもなく、自分を“カタローニャ人”と呼ぶパコの二人が織り成すロード・ムービー。

愛する女性を追いかけてロシアを離れ、その女性に裏切られたことから故郷に帰れないニノ、愛する女性から3週間後に会って愛を確かめようと放り出されたパコ。二人とも、アイデンティティはもとより、どうしょうもなく宙ぶらりんな状態。宙ぶらりんゆえに自由で、宙ぶらりんゆえに居場所がない。そこで二人はあてのない旅に出ます。その旅の途中で出会うもの、失うもの、そして旅の行く末に待ち受ける二人の運命...。

冒頭のヒッチハイクの場面から、ニノが車を盗んで、パコが女性と知り合い、やがて二人で旅に出るまでのくだりが、何とも牧歌的で楽しいです。内容的には盗難あり、暴力あり、嘘もあれば怪我もする、と結構どたばたといろんな事が繰り広げられるのですが、何かイランの映画を見ているような、そこはかとないのんびりさがあるんです。基本的に二人に共通している、素直さとタフさが独特の空気を作り出しているのでしょうか。二人の台詞や掛け合いにも味があります。”自分が何者であるか”を頑ななまでに持ち続ける人間にとって、世界は時に残酷ですが、きっとどこかに理解してくれる人がいる、その希望を捨てないで前に進んでいく限り、その先にはきっと素晴らしい人生が待っているのではないでしょうか。
ちなみに本作は、同年カンヌ国際映画祭のパルム・ドールにノミネート、審査員賞を受賞しました。

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