No.168
タイトル
ミルドレッド
(原題)
UNHOOK THE STARS
監督
ニック・カサヴェテス
キャスト
ジーナ・ローランズ、マリサ・トメイ、ジェラール・ド・パルデュー他
制作
1996年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
106分
評価
★★★★
<ストーリー>
中年を迎えた未亡人ミルドレッド(ジーナ・ローランズ)は、最愛の娘が突然家を飛び出したことで、たった一人になってしまう。そんな折、彼女は向かいに住む若い主婦モニカから6歳の息子JJを預かって欲しいと頼まれる。少年JJとのふれあいから、ミルドレッドの生活にまた愛らしいひとときが訪れるが.....。

<コメント>
インディーズ映画の父、ジョン・カサヴェテス、永遠の名女優、ジーナ・ローランズ。この二人の間に生まれたのが本作を監督したニック・カサヴェテス。どちらかと言うと偉大な親の影に隠れてあまり存在感が無い気がしますが、父の遺した脚本を作品化した『シーズ・ソー・ラヴリー』(1997)はカンヌ国際映画祭のパルムドールにノミネートされるほどでしたし、デンゼル・ワシントンを主役に親子の絆を描いた最新作『ジョンQ』(2002)も評判になりました。
本作も母と娘、女と女、女と男等、さまざまな人間関係を中心に、悩み、戸惑いながらも自分の人生を歩む女性たちを鮮やかに描き出しています。
とは言え、やはり最も心に残るのはジーナ・ローランズの演技。キャラクター的には以前の作品に比べると”普通”ですが、ふとしたきっかけで人生を振り返り、そして新たな一歩を踏み出す女性を貫禄たっぷりに演じています。彼女に好意を寄せる男性にはジェラール・ド・パルデューがキャスティングされています。自国フランスの映画では圧倒的な存在感を誇る彼も、ジーナ・ローランズを目の前にすると普通のお兄ちゃん。これをパルデューの存在感が無いと捉えるか、邪魔にならない程度の人物に演出したニックの手腕を称えるか、好みが分かれるところかもしれませんが、個人的には後者ですね。彼の出現は、ジーナ=ミルドレッドの人生に花を添えるべく用意されたエピソードであると思いますので。
本作では、人と人が一対一で向き合う場面が強調されていますが、中でも一番心に残ったのは、ミルドレッドと娘が夜中にテーブルで向き合ってお酒を飲むシーン。静けさの中で本音を語り合う開放感、そして、本音で話せばすべて解決されるわけではないという寂寥感。じんわりと沁みてきます。
ちなみにミルドレッドと心の交流を持つ坊やは『スターウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)のアナキン少年です。

<以下、ネタばれ注意!>
ミルドレッドの息子は母親の愛を十二分に受けた(受けすぎた?)男性で、母親に同居を求めます。客観的に見れば彼女にとっても良い話のように思えますが、彼女はそれを断ります。その断る瞬間のあっさりした、それでいて深い演技がすごい。この作品で一番グッと来るのは実はここでした。相手が肉親であれ、誰であれ、私には私の考え方があり、人生がある。新たな人(=モニカやJJ)との関わりがなければ、こうはならなかった(断らなかった)かもしれない、それでも....。ここの決断がラストの彼女の旅立ちにつながる時、母でもなく、祖母でもなく、女として自立した一人の人間の魂を目の当たりにします。ここには確実に父カサヴェテスの意思が受け継がれていると思います。

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