No.80
タイトル
パリ空港の人々
(原題)
TOMBES DU CIEL
監督
フィリップ・リオレ
キャスト
ジャン・ロシュフォール、ティッキー・オルガド、マリサ・パレデス他
制作
1993年/フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
91分
評価
★★★★
<ストーリー>
モントリオール空港で出発便を待ちながらついうとうとしてしまった学者のアルチュロ(ジャン・ロシュフォール)。目を覚ますとパスポートや財布の入ったカバンが無くなっていた。おまけに履いていた靴までも。しかし搭乗券の残っていた彼はそのまま妻の待つパリへ。ところが到着したパリではパスポートが無いため入国を拒否されてしまう。本人確認をしようにも暮れの押し迫った忙しい空港では手続きもままならない。結局彼はそのまま空港で一夜を明かす羽目に.....。

<コメント>
『タンデム』(1987)、『髪結いの亭主』(1990)等、パトリス・ルコント監督の作品でもおなじみの愛すべき子供大人ジャン・ロシュフォール主演の作品。監督はフランスのフィリップ・リオレ監督(いろいろと検索してみましたが監督作品はこれだけのようです)。フランスのシャルル・ドゴール空港に足止めされた男と空港に住み着く人々との不思議な交流の物語です。

ストーリーはパスポートを盗まれて空港で夜を明かすことになった男・アルチュロと空港にいるさまざまな人々との人間模様を描いた単純なもの。演出的にも特に凝ったところは見当たりませんが、それぞれのキャラクターは印象的に描かれていると思います。何処にも行けず空港に住み着いている人たちがいる、という設定は滑稽なようでシリアスでもあり、そのせいか、ところどころ笑いを誘う場面はあるものの、大笑いには繋がらず、くすりとさせられる感じです。ユーモアというよりもペーソスといった方が適当でしょうか。
そういったテイストも味わい深いですが,それよりなによりやっぱりジャン・ロシュフォールですね。個人的には『髪結いの亭主』以降すっかりファンになってしまったのですが、ここでも良い味出しています。秀逸なのは父親を待つ少年のためにテーブルの上でパリの風景を描写するところ。この侘しさと寂しさが交じり合った状況にセンチメンタルな感情が覆い被さってくる感覚は彼抜きでは考えられないでしょう。この場面に限らずですが、この人の演技は本当に温かみがあります(彼が主演でなければ★は三つでした)。
欲を言えば主人公はもともと人間関係に疲れ人生の目的も見失った人物で(ゆえに奥さんとも心身ともにすれ違い)、この空港での体験によって何かを見つける、もしくは見つけられそうな気がする、とうような流れや描写があるともっとインパクトのあるロードムービーになったような気がします。奥さんが奔走するさまは面白いけれどちょっとドタバタな感じがしました。あと、謎のエチオピア人(?)の扱い方ももうひとひねりあっても良かったかな。突然魂の彷徨を感じさせるようなラストについては好き嫌いが分かれるかもしれませんが、個人的には結構気に入っています。
少し余談になりますが、作中、登場人物が滑走路でウサギを捕まえる場面があります。「うそだろー」と思って観ていましたが、実は本当にいるらしいです。翻訳家として活躍されている稲松三千野さんのエッセイ「シネマトランス 『パリ空港の人々』−ウサギの悲運−」(出典:「文学メルマ! 稲松三千野 シネマトランス」(URL:http://www.melma.com/bungaku/))に次のようなくだりがあります。
「とにかく映画を観たときは、本当に空港でウサギがとれるのか半信半疑だった。が、実はパリ、シャルルドゴール空港には山ほどウサギがいるのだ。実際、この目で確かめた」。
出張でフランスを訪れた帰り、離陸前に機内からご覧になったそうです。フランスに行かれる予定の方はドゴール空港での離着陸の際は起きておいた方がいいかも?

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