No.327
タイトル
桜桃の味
(原題)
TA'M E GULIASS
監督
アッバス・キアロスタミ
脚本
アッバス・キアロスタミ
キャスト
ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ他
制作
1997年/イラン
ジャンル ドラマ
上映時間
98分
評価
★★★★★
<ストーリー>
黄色い土埃をあげてジグザグの道を走る一台のレンジローバー。運転する、人生に絶望した男バディ(ホマユン・エルシャディ)は、助手席に乗せる男たちに次々と奇妙な仕事を依頼する。「明日の朝、穴に横たわる自分に声を掛け、返事がなければ土をかけてくれ」。しかし、自殺の手伝いを引き受ける者はいない.....。

<コメント>
イランの、というより世界の映画界を代表する巨匠アッバス・キアロスタミ監督作品。いつもながらのシンプルなプロット、淡々とした進行、そして驚きのラスト。素晴らしいです。同監督作品の中でもポジティブなメッセージにあふれている作品ではないでしょうか。もちろん、現実的で深い部分もあってバランスは保たれていますが。

ストーリーはいたってシンプルで、人生に挫折し、生きることを諦めた一人の中年男が車でさまようお話。主人公バディは車を運転しながら自分の自殺を手伝ってくれる人を探してまわります。「睡眠薬を飲んで穴の中に横たわるから、次の朝に来て私の名前を呼んでくれ。返事がなければそのまま埋めてほしい」と。バディは精神的に追い詰められているし自殺も本気なわけですが、次々に遭遇する人々とのやりとりがなんだか面白い。貧困や宗教といったテーマも取り上げられているので見方によっては重いのですが、あまりにも淡々としていて拍子抜けしてしまいます。そしてバディが最後にめぐり会う老人。この老人の言葉一つ一つに深みがあり、これが本作の中では見所となっているのですが、ではこの老人が何か救世主的なオーラがあるかというと全然そうではありません。逆に、主人公に後を追いかけられ迷惑そうにすら見えます。でもこの感じがキアロスタミ監督の味なんですよね。

<以下、ネタばれ注意!>
本作で最も観ている側を悩ますのがラストシーンではないでしょうか。人それぞれいろんな見方があると思いますが、とりあえず私は、作中の最後に会う老人の言葉「見方を変えれば世界が変わる、幸せな目で見れば、幸せな世界が見えるよ」という台詞がポイントになっている気がしました。最後にキアロスタミ監督の視点による世界が映し出されます。それは映画の撮影風景ですが、天気もよく、牧歌的なシーン。世界は美しく、人々は生き生きとしています。きっと次の日の朝のバディの目にも同じような風景が広がっていたのではないでしょうか。

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