No.144
タイトル
NYストリート・スマート
(原題)
STREET SMART
監督
ジェリー・シャッツバーグ
キャスト
クリストファー・リーヴ、ミミ・ロジャース、モーガン・フリーマン他
制作
1987年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
97分
評価
★★★
<ストーリー>
野心に燃えるNYのフリー・ジャーナリスト、ジョナサン・フィッシャー(クリストファー・リーブ)。彼は出世のため、編集長にスクープのネタをつかんでいると大見得を切ってしまう。実際にはネタなど無い彼は、締め切りに追われ、仕方なくポン引きの記事を捏造する。結果、その記事は大評判となるが.....。

<コメント>
アメリカン・ニュー・シネマの秀作『スケアクロウ』(1973)で、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したNY出身・ジェリー・シャッツバーグ監督の作品。『スケアクロウ』ではジーン・ハックマンとアル・パチーノの演技が激突しましたが、本作ではクリストファー・リーブとモーガン・フリーマンの一騎打ちです。
近年、俳優としての頂点を極めた感のあるモーガン・フリーマンですが、ある意味この作品が出世作と言えるのではないでしょうか。『ベティ・サイズモア』(2000)でも久しぶりに悪役を演じましたが、多少コミカルな演出とにじみ出る人柄からか、根っからの悪にはなり切れなかった彼ですが、本作は街を仕切る非道のハスラー役。他人を威嚇する体格ではありませんが、アメと鞭を使い分けて人を操る様はまさにみんなから恐れられる存在。この抜け目が無くて冷徹なキャラクターのリアリティには、彼の人間味溢れる演技に惹かれてファンになった方は衝撃を受けるかもしれませんね。
物語はひょんなことから彼と運命を共にする羽目になったジャーナリストが主人公。しかしながら、そもそも彼自身が雑誌の記事を捏造したことが原因なので救いは無いです。この行為は、メディアに携わる人間が絶対やってはならないこと。たまたま街に記事の登場人物と似た人物がいたことによって表沙汰になったけれど、そうでなければ賞賛されたままで終わったであろう、業界のゆるさと雑さが恐ろしい。主人公が次第に窮地に追い込まれますが、テレビでコーナーを持っても相変わらず捏造に近い報道を続ける彼に感情移入できるはずも無く、また、メディアに生きる人間の”きつさ”が描き足りないため、捏造せざるを得なかったがけっぷちの状況も伝わらず、終始自業自得の感は拭えません。フリーマンが被害者にさえ映ります。クリストファー・リーブがいかに帳尻あわせに走ろうとも、多少ご都合主義的に物語が解決しようとも、悪人に、そしてストリートに利用されたメディアに存在する価値はありません。
音楽を担当したのは、80年代にグッとストリート・ミュージックに接近した帝王マイルス・デイビス。ここでは多少軽めながら、やはりクールな音を聞かせてくれますが、その軽めのノリに引きずられるかのように、多少地に足の着かない展開が前半を支配してしまうのが何とも残念。扱っているテーマの割には、どっしりと腹にこたえるドラマにはならなかったです。モーガン・フリーマン演ずるストリートにしか生きられない人間の恐ろしさと哀しさが心に残る作品。彼独特のものすごく高い声がここでは常に緊張にさらされている人間像にマッチしています。
最終的にクリストファー・リーブ自身が社会的のみならず、肉体的にも抹殺されることにより、人の生き死にさえもおのずとコントロールしてしまうメディアの恐ろしを浮き彫りにすることが出来ていれば、さらにやばい映画になったのではないかと思いますが。

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