No.88
タイトル
イングリッシュマンinニューヨーク
(原題)
STARS & BARS
監督
パット・オコナー
キャスト
ダニエル・デイ・ルイス、ハリー・ディーン・スタントン他
制作
1988年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
90分
評価
<ストーリー>
イギリスの名門オックスフォード大卒のヘンダーソン(ダニエル・デイ・ルイス)はアメリカン・ドリームを胸に抱いてニューヨークにやってきた、アート・オークション会社の新米社員。そんな彼にルノアールの秘められた名画を買い付けるビッグ・チャンスが巡ってくる。絵の持ち主ルーミス・ゲージ(ハリー・ディーン・スタントン)とその一家の変人ぶりに振り回されながらも、彼は必死に絵を買い付けようと奔走するが.....。

<コメント>
アイルランド出身のパット・オコナー監督の作品。イギリス王室の桂冠詩人を父に持つアカデミー俳優ダニエル・デイ・ルイスを主演に配し、ニューヨークで成功しようとする典型的なイギリス人がアメリカとの文化の違いから翻弄される様を描いたコメディ・ドラマです。

「僕はコーヒーは飲まない、紅茶が好きなんだ」という歌詞で始まるスティングの曲に乗せてアメリカとイギリスの文化の違いをコメディ・タッチで描く、という狙いは分かりやすいし面白いと思います。主人公のイギリス人役にまさにハマり役の演技派ダニエル・デイ・ルイスを配したのもうなづけます。しかし残念ながら結果は思わしくないですね。脚本のウィリアム・ボイドは1994年に『グッドマン・イン・アフリカ』でも同じようなコメディを展開していましたが、ギャグにひねりが効いておらず笑えませんでした。ここでも両国の文化の違いを浮き彫りにし笑いを誘うのは、”考え方”や”暮らし方”のすれ違いが引き起こす面白さではなく、とにかく次から次へと沸いて出てくる”変わった”アメリカ人の登場人物たち。そのいずれもがキャラクターとしてエキセントリックすぎてやっぱり笑えません。なので扱っているテーマのわりにリアリティも伝わってきませんでした。
同じくこの人が脚本を手がけた作品でも『ラジオタウンで恋をして』(1990)なんかはそこそこ印象に残っているのですが。これならもっとストレートながらイギリスっぽい毒の効いた『ビーン』(1997)の方が上かも。
ドタバタ・エピソードの連続でペーソスみたいなものが何も伝わってこないあたり、ある意味80年代的と言えるかもしれませんが。

パット・オコナー監督と言えば、往年の名作『今宵かぎりの恋』をキアヌ・リーブスとシャーリーズ・セロンの主演でリメイクした『スィート・ノベンバー』(2001)が最近話題になりましたが(残念ながらシャーリーズ・セロンはその年の最低の映画を決める”ラジー賞”のワースト主演女優賞にノミネートされてしまいました)、個人的にはデビュー作『キャル』(1984)やその次の『ひと月の夏』(1987)なんかの方が地味ながら結構好きでした。両方とも切なさを感じさせる佳作だと思います。そう考えるとそもそもこの人はあんまりコメディに向いていないんじゃないかと思うのですが(ひょっとしたら本人はこれをコメディと思っていないのかもしれませんね)。

ダニエル・デイ・ルイスの演技は悪くないです。同年公開された『眺めのいい部屋』(1986)での役どころも”いかにも英国人”的存在でしたが、やっぱり説得力ありますね。血筋からして違うし。キャラクターをしっかり演じてもそれが笑いにつながらないのが悲しいところですが。しかし滑稽なほどに生真面目でありながら、女性に対してはだらしないところもあったり、なんだかんだ言いながら行動力もあったりして、おかげでラストは(脚本自体は納得行きませんが)結構人間くさいたくましさを感じさせます。
英語に詳しいような人にはもっと違った面白みのある作品かもしれません。

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