No.120
タイトル
スピリッツ・オブ・ジ・エア
(原題)
SPIRITS OF THE AIR
監督
アレックス・プロヤス
キャスト
マイケル・レイク、ザ・ノーム、ライズ・デイヴィス他
制作
1988年/オーストラリア
ジャンル ドラマ
上映時間
93分
評価
★★★★
<ストーリー>
フェリックス(マイケル・レイク)とその妹ベティ(ライズ・デイビス)は、果てしなく広がる砂漠の中に二人きりで住んでいた。足の不自由なフェリックスは、空を飛ぶことに取り憑かれ、ベティは虚ろに音楽を奏でる日々。そんなある日、二人の前に、スミス(ザ・ノーム)と名乗る謎の男が現れる。.....。

<コメント>
イン・エクセスやクラウデッド・ハウス等のビデオクリップで知られる映像作家アレックス・プロヤス監督の作品。オーストラリアの広大な平野を舞台に繰り広げられる、行き場の無い人間たちの物語です。
冒頭からとにかくその映像美に圧倒されます。兄と妹が生きている場所はある意味外的世界と分断された世界。それを象徴するかのように画面を真っ直ぐに横切る地平線。その下には果てしなく広がるオレンジ色の砂漠、上にはこれも永遠に続くと思われる澄み切った青い空。そして、時折映し出される、画面を埋め尽くさんばかりのおびただしい数の十字架。閉じられ、遮断されながらも確実にどこかに続いていると思わせるその映像描写は、それだけで他社とつながりたくともつながれない主人公の二人の心情を表しているようです。
完璧なものというのがこの世に存在するならば、それはとてつもない美を持っているはず。しかし、現実の世界はそんな完璧なるものの存在を許さない。それは閉ざした心の中にだけ存在することが出来るはかなくて危ういもの。兄は足を失ったがゆえに外の世界に憧れますが、妹にとっては亡くなった父の思い出と共に内なる完全な世界で生きることが幸せ。現実の世界に生きているかどうかは幸せの基準になりえないのです。夢と現実のバランスを取るかのように外からの侵入者がやってきますが、二人にとってどちらの世界に住むかはすでに出ている結論。十字架の数、妹の言動が宗教色を垣間見せるものの、他者としての神に頼る姿勢は微塵もありません。空虚で乾いた信仰は狂気そのもの。

途中、兄が行きずりの男と意気投合するくだりは少しあっさりしている感がありますが、後半、兄の目に宿る狂気は(兄の風貌・キャラクターもあるのですが)ヨス・ステリングの『イリュージョニスト』(1983)を彷彿させます。この壊れ具合は神経症的なそれではなくて、人間の絶望感から沸き起こるもの。ここから先には行けないことを知りながら、逃げ出した先に待っているものを知りながら、結局は同じことであることを知りながら、それでも逃げ出すことに希望を見出し生きようとする兄。
風景描写が絵画的で美しいため、場面ごとに変わる妹のメイク、衣装が最初は浮いているように感じられましたが、硬質な音楽も絡めながらなじませていくあたりうまいと思いました。外の世界に脱出(=妹にとっては逃避)しようとする兄に対して、もっと妹の心情的変化や反発のようなものがあっても良かった気がしますが、それも内的(メイクと衣装の変化)に消化されているということでしょうか。
それにしても虚ろな兄の表情を捉えたラストシーンは素晴らしい。私たちは何かを失わずに何かを得ることは出来ない。そして失ったものは二度と戻ってこない。世界とは離れているように感じますが、世界は私たちの思惑や言動に震え、波のように反応します。私たちに出来るのはその波に身を任せることだけ。

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