No.184
タイトル
白い恐怖
(原題)
SPELLBOUND
監督
アルフレッド・ヒッチコック
キャスト
イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック、レオ・G・キャロル他
制作
1945年/アメリカ
ジャンル サスペンス
上映時間
110分
評価
★★★★
<ストーリー>
ある精神病院に新しい院長エドワード博士(グレゴリー・ペック)がやってくる。若い女医コンスタンス(イングリッド・バーグマン)は彼と恋に落ちる。しかし、彼女はやがて彼がエドワード博士ではなく、白い縞模様を見ると精神に錯乱をきたす記憶喪失の男だと知る.....。

<コメント>
スリラー作家として知られるフランシス・ビーディングの原作をサスペンスの神様、アルフレッド・ヒッチコック監督が映画化した作品。
ヒッチコック作品としては『裏窓』(1954)、『めまい』(1958)のような派手さはないものの、テルミンを不気味なサウンドとして用いたり、フロイトの夢分析をモチーフとして推理を進める等、独特の雰囲気を感じさせる傑作です。ヒッチコックらしい実験的な演出も盛りだくさんで、容疑者が手にした剃刀を画面の手前に配した構図、ミルクを飲む際にコップの底越しに映し出されるショット、意思を持ったかのように人物を捉える拳銃の動き、等々見逃せません。シュールレアリスムの画家サルヴァドール・ダリが手がけた夢のシーンもすごい(無数の目が付いたカーテンを巨大ハサミが切り刻む!)。線も構図もハッキリとした夢の描写でありながら、どんな映像よりも現実を超えているところがさすがダリ。これだけでも一見の価値ありです。シュールですなー。

で、個人的に本作で最も心惹かれるのは、やはりイングリッド・バーグマンの美しさ。精神科医という設定で、冷淡なほどの知性を感じさせる役柄だけれど、奥に秘めた美しさを感じさせるところがすごい(あんな眼鏡をかけさせたヒッチコック監督もやっぱりすごい)。最初の純粋だけれど殻に閉じこもった女性像から、中盤以降、女性としての情を徐々にむき出しにしていく演技も素晴らしい。眼鏡を取った瞬間に感じさせる女らしさは知性と強さに裏打ちされた大人の色気。精神分析をモチーフにした理論的な謎解きの物語でありながら、この美しい女性と記憶喪失の男とのロマンスの要素が、やり過ぎないぎりぎりで成立しているところがこの作品の見所でもあります。
イングリッド・バーグマンの100点に比べると、記憶喪失の男役のグレゴリー・ペックは、その症状、状況設定の割りに淡々としすぎている感じがしますが、それもバーグマンとの恋愛につながっていると思えばさほど気にならないかも。夢の内容からさまざまな事実や証拠を引き出すくだりは少し単純で説明っぽさが鼻につきますが、本作が製作された1940年代では斬新な手法だったのでしょう。ラストの落ちはいかにもサスペンスという感じであまり好きではありませんが、ヒッチコック節を堪能できる傑作だと思います。
本作はアカデミー賞6部門(作品賞・監督賞等)にノミネート、劇・喜劇映画音楽賞を受賞。イングリッド・バーグマンは本作ではアカデミー賞にはノミネートされませんでしたが、NY批評家協会賞・女優賞を受賞しました。

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