No.197
タイトル
アメリカの影
(原題)
SHADOWS
監督
ジョン・カサヴェテス
キャスト
レリア・ゴルドーニ、ヒュー・ハード、ベン・カラザース他
制作
1959年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
81分
評価
★★★★★
<ストーリー>
ヒュー(ヒュー・ハード)、ベニー(ベン・カラザース)、レリア(レリア・ゴルドーニ)の黒人3兄妹。レリアは白人男性トニー(アンソニー・レイ)と恋に落ちるが、二人の間にはぎくしゃくとした人種の壁があった。そんなレリアと彼女を心配する兄ヒューをよそに、ベニーは今日も悪友たちと街に繰り出していく.....。

<コメント>
ニューヨーク出身、インディペンデント映画の父と呼ばれる一匹狼、ジョン・カサヴェテス監督のデビュー作。ちょっと荒めのモノクロ映像に、即興的な演出、チャールズ・ミンガスの乾いたサックスの音色。人種問題を取り入れながらも特別に問題点を抉り出したり結論を導き出したりせず、あくまでもクールに淡々と登場人物を、街を追い続ける視点。すべてが完璧ですね。私がこの映画を見た後、いてもたってもいられなくなり、御茶ノ水にサックスを買いに言ったというのは誰も知らない有名な話(笑)。
カサヴェテス監督はもともと俳優としてデビューしましたし、『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)、『特攻大作戦』(1967)等、それなりに有名な作品にも出演していますので、どちらかというと俳優としての方が有名かもしれません。しかし、特に映画業界に関わる方なんかにはやはり映画監督として尊敬されていると思います。もともと、俳優業を営んで(というのはおかしいかもしれませんが)いたのは、映画制作のための資金稼ぎという意味もありました。今で言うと、ショーン・ペンがそうですね。俳優で稼いだ金で映画を撮ってます。もちろん彼もまたカサヴェテスの洗礼を受けた映画人の一人です。
本作は前述のように褒め言葉だけ挙げると、とんでもなくクールでカッコいい映画に聞こえます。もちろん映像・音楽・演出に関してはそう思います。ただ、そこに登場する人物たちはみな空虚です。冒頭、ニューヨークのにぎやかな一面が映し出されますが、そこに現れた主人公のべニーは居場所のない子供のようです。他の登場人物もみな同じ。それぞれが自分の存在意義や生きる意味を求め、それぞれが微妙に絡み合いながらそれでいてすれ違う日常。それでも人生はジャズの即興演奏のように淡々と続いていきます。
このあたりの人間関係の希薄さや浮遊感は1968年のアカデミー賞3部門にノミネートされた『フェイシズ』に結実し、これが彼の代表作となるのですが、個人的にはやはり本作の”アメリカの清濁を映し出した感”が好きなんですよねー。空虚なんだけれどかっこよくて、クールなんだけれどどこにも行き着かない、みたいな。男二人と女一人で広場を歩く場面とか、男3人で美術館に行く場面とか、最高です。映画って脚本なんてなくてもいいんです、って言うのは乱暴すぎるでしょうか。
ラストもいいですね。目的も無く街をさまよう主人公。彼がどこに行くのかこれからどういう人生を送るのか誰にもわかりませんが、ただひとつ確かなのは、私たちもまた同じ道を歩いている人間だし、私たちの人生もまた続いていくのだということです。

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