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No.272 |
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タイトル
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ロゼッタ |
(原題)
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ROSETTA |
監督
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リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ |
脚本
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リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ |
キャスト
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エミリー・ドゥケンヌ、ファブリッツィオ・ロンギーヌ他 |
制作
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1999年/ベルギー、フランス |
ジャンル |
ドラマ |
上映時間
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93分 |
評価
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★★★★★ |
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<ストーリー>
アルコール中毒の母と一緒にキャンプ場暮らしのロゼッタ(エミリー・ドゥケンヌ)は、その不安定な生活環境や運の無さから仕事が続かない。普通の生活をするため、母を病院に入れるため、必死になって仕事を求めるが、何もかもうまくいかない。そんな時、ワッフル屋で働く男と仲良くなり、彼もロゼッタに好意を抱くが.....。
<コメント>
ヨーロッパのみならずアメリカでも波紋を呼んだ『イゴールの約束』(1996)等、冷徹なまでのリアリズムを突きつけてくるベルギー出身のダルデンヌ兄弟の作品。
アルコール中毒の母親、水やガスもろくに使えないキャンプ場暮らし、自分の都合ばかり考える雇い主等、さまざまな厳しい現実の中に生きる少女ロゼッタを追った物語。
手持ちカメラによるぶれや音楽が無いことによってドキュメンタリーっぽく見せるのはこの監督の特徴。時に、まるで主人公の後ろを追っかけているだけのようなカメラワークは、ドキュメンタリーというより単なる傍観者なのではないかと思わせるほどです。そしてその姿勢は終始一貫しています。
簡単に言ってしまうと、ハリウッド作品が好きかどうかで、評価が真っ二つに割れる作品だと思います。ハリウッド作品好きの方には、単なる誘眠剤にしかならないかもしれません。それでも、何か胸に引っかかる感情があるはずです。それは主人公に対する怒りや諦め、憐れみかもしれません。私は、現代に生きる人間たちにとって、社会に渦巻くさまざまな問題の原因を、貧困のみに求めたり、社会制度のみに求めたり、人間関係のみに求めたりすることはもはや出来なくなっている、そういうある種根源的な”戸惑い”を投げつけられた気がしました。一見、淡々とした物語ですが、主人公ロゼッタが、ただ単に歳を重ねることにより大人になり、日々の現実に流され、思うがままに行動するという、”過去”の蓄積としての人生を生きているのではなく、先のない母親や自己都合のみに生きる周りの大人たちのようにならぬよう、見えない”未来”と戦っているのだ、と気づいた時、この音も演出もそぎ落とした映像の荒い息遣いが如実に立ち上がってきます。
やおら彼女を応援する必要もなく、彼女の未来を案ずる必要も無い。それでも私はラストのロゼッタの微妙な表情の中に、かすかな希望を感じました。周りは何も見えない暗闇の中にいても、自分が立っていることだけはわかる、すべてはそこから始まるのです。 |
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