No.116
タイトル
雨のなかの女
(原題)
THE RAIN PEOPLE
監督
フランシス・フォード・コッポラ
キャスト
シャーリー・ナイト、ジェームズ・カーン、ロバート・デュバル他
制作
1969年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
102分
評価
★★★
<ストーリー>
新婚1年足らず、子供を身ごもったナタリー(シャーリー・ナイト)は、ある雨の朝、突然夫に置手紙を残しあてもない旅に出る。いいしれぬ不安にかられながら車を飛ばす彼女は、途中で元フットボール選手のギャノン(ジェームス・カーン)を拾う。やがて彼女は彼の持つ純粋さに惹かれていくが.....。

<コメント>
昨年アメリカ映画を代表する問題作『地獄の黙示録』の”完全版”をリリースし、新たな衝撃を世界に投げかけたフランシス・フォード・コッポラ監督が1969年に撮った作品。スタジオを一切使わず、全米を旅しながら撮影されたアメリカン・ニューシネマの佳作。

主人公のナタリーは、突然、家を飛び出してしまいますが、その理由は夫との関係や妊娠による不安だけではないと思います。彼女を突き動かしたのは、人生そのものに対する漠然とした不安ではないでしょうか。一方、彼女が出会う青年ギャノンは、知的障害を持っているがゆえに社会に適応できずにいます。
周りの世界との折り合いの悪さから家出をした彼女にとって、社会の思惑のままに翻弄される青年は放っておけない存在。彼女は、彼と社会とをつなぐことが出来れば自分自身も救われるかのように彼に救いの手を差し伸べます。しかし、世界と真正面から向き合っていない彼女にとって、それは所詮無理な話。結局、厳しい現実が二人の前に立ちはだかります。
アメリカ映画では、知的障害者を純粋な存在として捉え、その純粋さによって悩める人々が癒されていくという単純な展開がたまに見られますが、この作品に登場する青年ギャノンが浮かべる笑顔は明るくて子供のようでありながら、同時に社会に対する諦めのようなものも感じさせます。もちろん、人を疑うことを知らず、素直で純粋なキャラクターではありますが、若くてみずみずしい演技を見せるジェームス・カーンのおかげでリアリティは失っていません。ジェームズ・カーンと聞いて『ゴッド・ファーザー』シリーズを思い浮かべた方は、ちょっとびっくりするかも(笑)。
また、主人公ナタリーを演じるシャーリー・ナイトがいいですね。この作品はどこかフランス映画を感じさせる雰囲気があり、個人的にはそこがとても気に入っているのですが、彼女の風貌や振る舞いも貢献しているはず。

ナタリーと夫との関係等、もう少し突っ込んで欲しかったところもありますが、”雨”を背景にした湿った空気感や絵画的な風景描写は一見の価値ありです。キャラバン隊を組んで全米を旅したというだけあって、ロード・ムービーのテイストもちゃんと伝わってきます。大作ではないけれどこういう作品をきっちり撮っているコッポラって好きですね。90年代以降、意欲的に活動を続けているものの(それ自体にはもちろん拍手!)、どこか焦点の定まらないところのあるコッポラ監督ですが、またしっかりとした人間ドラマを撮ってもらいたいものです。

<以下、ネタばれ注意!>
あまりにもリアリティ・時代性にこだわりすぎたようなラストは、ちょっと消化不良。いかにも、といった感じ。もう少し”雨”にこだわった幻想的なラストが用意されていれば、切ない余韻を残す印象的な作品になったのではないでしょうか。まあ、(ギャノン君には申し訳ないですが)主人公が死ななかったという意味では、救いがあるとも言えますが。

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