No.125
タイトル
太平洋の地獄
(原題)
HELL IN THE PACIFIC
監督
ジョン・ブアマン
キャスト
リー・マーヴィン、三船敏郎
制作
1968年/日本、アメリカ
ジャンル 戦争ドラマ
上映時間
103分
評価
★★★★
<ストーリー>
太平洋戦争末期、南太平洋カロリン諸島のとある小島に漂着したアメリカ兵(リー・マーヴィン)と日本兵(三船敏郎)。言葉が通じない二人は互いに憎悪を燃やし激しく対立する。しかし、いずれ島を抜け出さなければお互いに未来は無いと悟ったときから、徐々に協力し合うようになるが.....。

<コメント>
ユニークな視点で個性的な作品を発表し続けるジョン・ブアマン監督の作品。『未来惑星ザルドス』(1974)や『戦場の小さな天使たち』(1987)等、異色の作品が並ぶブアマン監督の作品の中でもさらに異色な作品。戦争映画としてもこれまた異色中の異色。といっても設定は極めてシンプル(シンプルすぎて異色なんですが...)。
作品に登場する人物は2人だけ。とある島に流れ着いたアメリカ兵と日本兵。二人とも母国語しか喋らないので、ほとんど会話はありません。では言葉の壁を越えた心と心を通い合わせるようなコミュニケーションがあるかというとそうでもない。でもって、ことある毎にぶつかり合う二人なんですが、その内容は戦闘というよりはどちらかと言うと子供のケンカという感じ。相手が泳いでいる隙に水を奪ったり、主従関係をはっきりさせようと犬のまねをさせたり。これだけ聞くと「何か間延びしてそうだなー」と敬遠される方もいらっしゃるかもしれませんが、内容的にはなかなか深いです。やっぱりこれはちゃんとした戦争映画。

まず登場人物を演じる二人の演技が素晴らしい。日本海軍大尉を演じる三船敏郎は少し時代を感じさせる大げさ感があるものの、さすがの存在感を見せてくれます。やたら手先が器用だったり、日本庭園を作ったりしてしまうあたりはステレオタイプを感じさせますが、まあ見ていて気分が悪いものではないですね。リー・マヴィンの演技もまたリアルでいいです。言葉ではなく二人の表情(時には目)のアップを多用した演出も心情を浮かび上がらせる効果を生み、緊張感が途切れません。
それとアカデミー賞の常連であるベテラン、コンラッド・L・ホール(『明日に向かって撃て!』(1969)、『アメリカン・ビューティー』(1999)等々)の映像が最高です。最初に二人が絡む戦闘シーンで、二人の姿が逆光でほとんどシルエットになってしまうあたり、渋すぎます。また、海、空、ジャングル等の自然の描写が素晴らしい。お互いを嫌い、疑い、憎しみ合う二人、そしてその背景にある国と国との軋轢。そういったものとは一切無関係に輝き続ける自然の美しさが胸に響きます。こんな素晴らしい環境にいながらなぜ対立しなければならないのか、多くの言葉よりも戦争の無益さを如実に伝えてくれるようです。

<以下、ネタばれ注意!>
最後に用意されているのもいかにもブアマン監督らしい結末。初めて観た時は、”こういう結末になるなら、むしろ二人の間に戦争という対立を超えた人間同士としての真の友情が芽生えた方がより皮肉が利いていたのではないか”と思いました。しかし、友情を分かち合うのも一瞬、またお互いが個人を越えたところで敵であることを認識せざるをえないのも戦争ゆえ。そして、さらにはそういった感情等全くものともせず、爆弾は落ちてきます。戦争というのは要するに、敵とか味方とかという線引きをもあっさりと超えてしまう、”人間を殺す”行為なのだということでしょうか。

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