No.132
タイトル
王将
(原題)
王将
監督
伊藤大輔
キャスト
三国連太郎、淡島千景、三田佳子、平幹二朗他
制作
1962年/日本
ジャンル ドラマ
上映時間
92分
評価
★★★
<ストーリー>
天王寺の裏長屋に住む草履作り職人・坂田三吉(三国連太郎)。無学・文盲、字は将棋の駒ぐらいしか読めないが、天才的棋力の持ち主で、素人将棋大会では必ず優勝する。しかし大会に出場する費用捻出のため女房の着物を売り飛ばしたりするので、生活は一向に良くならない。妻・小春(淡島千景)はそんな三吉を見かねて将棋をやめるよう誓わせるが.....。

<コメント>
テレビや映画で何度もリメイクされている天才棋士・坂田三吉の生涯を描いた作品。本作は伊藤大輔監督による「王将」(坂東妻三郎主演)、「王将一代」(辰巳柳太郎主演)に続く3度目のリメイク。若き日の三国連太郎が破天荒の天才・坂田三吉を鬼気迫る演技で演じています。

文字の読み書きも出来ず金にもだらしないが、唯一恵まれた将棋の才能を磨きぬいた坂田三吉は特に関西で根強い人気を誇るヒーロー。私が坂田三吉の物語を初めて目にしたのはテレビドラマでした。ずいぶん昔の話なので細かいことは忘れてしまいましたが、確か主演は森繁久弥だったと思います。よく考えたら細かいことどころかそれ以外のキャスティングも全く覚えていませんでした。同様にストーリーもほとんど覚えていませんが、どちらかというと生涯のライバル関根八段との戦いよりも、その晩年に焦点が当てられていたような気がします。ライバル関根八段との歴戦を経て、関西名人を名乗った(後援会等の後押しに抗いきれなかったようです)ことから棋界を締め出され、京都南禅寺で木村八段を相手に行われた三吉復活の一戦。そしていまだに語り草となっている、その初手で見せた端歩突き(将棋では端歩突きは奇手。三吉は他にも角頭突きなど、常識を覆す奇策を好んだそうです)。結局木村八段に破れ、復活を遂げられなかった三吉。テレビのラストシーンは、「わしもっと強うなりたいねん」とつぶやきながら背中を丸めて歩いていく三吉の後姿だったような気がします(この辺りほとんど想像に近い記憶ですが...)。
当時は、例え奇手と言われようとも自ら培ってきたスタイルを頑固なまでに貫き通した男の、悲しくも人情を感じさせるラストだなーと思ったのですが、その後ビデオで映画「王将」を見て少し印象が変わりました。彼の端歩突きはただ単にプライド高き男の咆哮ではなく、ある世界の天国と地獄を見た男だけが知りうる道だったのではないかと考え直しました。そしてその道を貫くことの難しさ、そしてすがすがしさ。勝ち負けにこだわることの虚しさを知ったとたん、思い出となっていた三吉の悲しげな後姿がとてつもなく輝きを増したように思えました。

どちらかというと坂東妻三郎が三吉を演じた初作の方が人気があるようですし(私は見たことないのですが)、実際、本作では宿命のライバル関根を演じる平幹二郎が弱い。その分三吉本人の苦悩が伝わってくるとも言えますが、やはり勝負ものはライバルあってこその緊張感。それでも、妻・小春とのやり取りや娘・玉江に恫喝されるところ等は勝負師という職業を超えた人間の弱さが丸裸になり心を揺さぶられます。娘を演じる若き日の三田佳子の演技もほとんど狂気が宿っていてグッド。また通天閣の見える新世界の街の描写はとても凝っていて、ほとんどスラム街と呼べる環境なのに美しさすら感じさせます。「銀が泣いている」はまさに将棋に命を託した人間だけが言える名台詞。将棋のことを知らなくても楽しめる作品です。

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