No.107
タイトル
普通の人々
(原題)
ORDINARY PEOPLE
監督
ロバート・レッドフォード
キャスト
ドナルド・サザーランド、メリー・タイラー・ムーア、ティモシー・ハットン
制作
1980年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
124分
評価
★★★★
<ストーリー>
シカゴ郊外の静かな住宅地で暮らす一家。有能な弁護士の父、知的な母、出来の良い息子二人、それは一見理想的に見える家庭であった。しかし長男の事故死、それに続く弟の自殺未遂によって、家族は次第にバランスを失い徐々に崩壊していく.....。

<コメント>
アメリカの良心とも言えるロバート・レッドフォード監督が、長男を事故で失った家族の物語を真正面から描いた作品。監督の真面目で真摯な姿勢がにじみ出る傑作で、初監督作ながら1980年のアカデミー賞5部門にノミネートされ、4部門を受賞(作品賞、助演男優賞、監督賞、脚色賞)するという快挙を成し遂げました。

幸せに見えていた家族に大きなひずみをもたらすことになる、長男の事故死とそれに伴う次男の自殺未遂については、回想という形で表現されます。つまり喪失の後から物語は始まるわけです。そういう意味では冒頭部分に漂うただならぬ緊張感は不可欠なものであり、地味ながらぐいっと引き込まれるオープニングです。

家族が自力で再生する物語の場合、とにもかくにも家族間のコミュニケーションが成立していることから、逆にリアリティを感じない場合があるのですが、今回のように精神科医が間に入る設定というのは個人的にも納得できますね。近年、同様の設定の作品ではマット・デイモンが脚本を手がけた『グッド・ウィル・ハンティング』(1997)、ナンニ・モレッティ監督の『息子の部屋』(2001)なんかがありましたが、両方とも精神科医が絡んでいました(『息子の部屋』ではそもそも父親が精神科医)。本作品では精神科医は単純に指南役として機能するわけですが、両作品とも精神科医自身の再生の物語も孕んでいるあたり、時代を感じさせますね。確かにこういう問題をずっと引き受け続けていれば自身の再生の物語も必要になるわけです(笑)。
作品的には前述の2作と比べると少し地味な感じは否めません。前者はロビン・ウィリアムス、マット・デイモンのキャスティングやエリオット・スミスの音楽にインパクトがありましたし、後者はモレッティ自身の出演、ブライアン・イーノの音楽がありました。家族が抱える問題点を強烈な破滅によって浮き彫りにした『アメリカン・ビューティ』(1999)あたりと比べるとさらに地味な作品に見えてきます。
公開当時日本でもかなり話題になった記憶がありますが、インパクトに欠けたのか、作品そのものの内容よりも「R・レッドフォード初監督作」というコピーを前面に押し出していたような気がします。そのせいか、同年のアカデミー賞で作品賞や監督賞を受賞したときも、なんか話題性だけが先行したような気がしたものです。しかしながら、もちろん、演出も脚本もちゃんとしてます。
ロバートレッドフォードの正攻法の演出は緊張感が途切れませんし、キャスティングも奏功しており、実際には見ごたえのある作品に仕上がっています。母親と息子が並んで写真を撮るときに、カメラが壊れて息子がいらだつ場面の心理描写等、秀逸ですね。
父親役のドナルド・サザーランド、母親役のメアリー・タイラー・ムーアのリアリティのある演技はもちろん、ティモシー・ハットンの問題を抱え悩みながらもさわやかさを失わない演技は、この作品の出来を左右しているほどだと思います(ただこの演技でのアカデミー賞受賞がその後の彼にとってプレッシャーとなってしまったかもしれませんが)。精神科医を演じたジャド・ハーシュも良いですね。最初は胡散臭いところがあるものの、後半には見ている方も彼頼みの気持ちになってしまいます。もったいなかったのは母親の描き方。彼女についてはもう一歩踏み込んで欲しかったと思います。長男に対してすべての愛情を注いでいたようにも受け取れる内容ですが、それにいたるまでの父親や家族との関係を描けば、多少は救いの手が差し伸べられたかもしれません。しかし、基本的にはそれぞれの立場について暖かい視点を失わず、それでいて容易には再構築できない家族の問題の複雑さを描ききった監督に拍手。

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