No.161
タイトル
ナッツ
(原題)
NUTS
監督
マーティン・リット
キャスト
バーブラ・ストライサンド、リチャード・ドレイファス、カール・マルデン他
制作
1987年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
115分
評価
★★★★
<ストーリー>
クローディア(バーブラ・ストライサンド)は良家の娘として何不自由なく育ったが、成人すると家を捨て、コールガールとなっていた。ある日、客の1人を殺してしまった彼女は裁判にかけられるが、精神異常から裁判を受けられないと判定される。しかし、彼女はそれを否定し、自分は正常だと徹底的に抗弁する.....。

<コメント>
映画ではアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、音楽ではグラミー賞、テレビではエミー賞、ミュージカルではトニー賞と、恐ろしいほどの輝かしい受賞暦を持つアメリカ・エンターテイメント界の屋台骨、バーブラ・ストライサンドが製作、音楽、主演を担当した法廷ドラマ。監督は50〜60年代に素晴らしい作品を残しているマーティン・リット。撮影は近年『ブラック・ダイアモンド』(2003)等のアクションものの監督として活躍しているアンジェイ・バートコウィアク。

nuts(ナッツ)=変人、奇人、狂人を意味する俗語、というタイトルに象徴されるように、冒頭からバーブラ・ストライサンドの鬼気迫る狂気の演技に釘付けです。ただ単に叫んでいるだけかと思いきや、目の奥にはゆるぎない信念を感じさせることもあれば、それでいて何の裏づけも無いかのように子供っぽくわめき散らす。そして、とうとう弁護人にパンチを見舞わせる。あまり感情的な人物像が好きでない方はここら辺で少し眉をひそめてしまうかもしれません。ここにアクの強さでは彼女に引けをとらないリチャード・ドレイファスが登場し、ひょんなことから彼女の弁護士として関わることになるのですが、このキャラクターが最高。従来の慣習や制度に反発するだけの人物像を演じるドレイファスは多少鼻につきますが、巨大な敵に反抗する彼は大好きです。しかも本作ではそれに加えて人情味に溢れ、冷静さも併せ持っているので最高に魅力的なキャラクターになっています。ホント応援したくなる。
ということでこの二人が、紆余曲折はありながらもお互いを認め合い、理解しながら、裁判を進めていきます。そしてやがて明るみにされる真実。基本的には法廷ものなんですが、人間ドラマとしてもなかなかです。テーマとしてはさほど目新しいものではなく(少なくともアメリカでは)、どんでん返し的な要素はないのですが、それよりも重要なのは、”狂気とは何か”という問いかけです。バーブラの迫真の演技もあって、途中あまりの子供っぽい振る舞いにさすがに「んなことやってると勝てる裁判も負けるよ」と思う方も多いかもしれません。しかし、その気持ちこそ私たちが疑問を持たなければならない感情なのです。彼女が終盤に放つ言葉はストレートで、重い。

<以下、ネタばれ注意!>
裁判の後、解放されて街に出たバーブラが、大声で怒鳴りながら歩く男とすれ違います。その時に彼女が振り返って「今の人大丈夫?」というしぐさを見せます。これは彼女が本当にまともだったことを暗示していますが、それによって逆に狂人を定義してしまった気がします。社会的な意味を除いてしまえば彼女と男との境界線は無いに等しいはずで、そこの問題提起こそ、この作品の持つ意味だったのではないかと思うとちょと残念。

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