No.403
タイトル
モーヴァン
(原題)
MORVERN CALLAR
監督
リン・ラムジー
脚本
リン・ラムジー他
キャスト
サマンサ・モートン、キャスリーン・マクダーモット他
制作
2002年/イギリス
ジャンル ドラマ
上映時間
97分
評価
★★★★★

【 ストーリー 】
スーパーマーケットで働き平凡な日々を送る女の子、モーヴァン(サマンサ・モートン)。クリスマスの朝、彼が自殺した。遺書には「僕の小説を出版社に送ってくれ」と書かれている。ところがモーヴァンは彼の死を嘆き悲しむ代わりに、小説の著者の名前を自分の名前に書き換えて出版社に発送する.....。

<コメント>
『ボクと空と麦畑』のリン・ラムジー監督が脚本まで手がけた作品。原作はアラン・ウォーナーの同名小説。さまざま事柄に巻き込まれながらもタフに生きるワーキングクラスの女性の物語。主人公のモーヴァン・カラーを演じるのは、『マイノリティ・リポート』(2002)のサマンサ・モートン。

恋人の自殺死体の隣で目覚める主人公。彼のパソコンに残された自分宛の手紙。彼が書いた小説を出版社に送ってくれというメッセージ。そして著者を自分に書き換えて出版社に送る主人公。おそらくこの冒頭部分だけでこの映画に引き込まれた人は相当数いるでしょう。このまま、謎が謎を呼ぶサスペンスドラマになってもおかしくないし、夢と現実が交錯するサイコスリラーになってもおかしくない。
しかしながら、本作は、というよりも、主人公は、そして主人公の魂は、この後、どこにもたどり着かず永遠とも思える旅に出てしまいます。

音楽の使い方、映像の美しさ、無駄を排した演出、そのすべてがどこかにたどり着くことを拒否しています。何者かになることを拒否し続ける美しさ。それは決して確信犯的なものではなく、無心に彷徨っているからこそ得られる境地。モーヴァンと旅を共にする女友達は実は奔放なように見えて現実をしっかり認識しています。一方モーヴァンはほとんど運命に導かれるように漂いながら生きています。
何が彼女を幸せにするのか、何が彼女を喜ばせるのか、ひょっとしたらそれは彼女自身にも分からないのかもしれません。不安を抱えながら生きる人生は、そのまま行くあてのない旅と同じ意味になります。それでも刹那的な快楽や苦痛はそこに存在していて、それによって現実に生きていることを認識せざるを得ません。虫や動物と違う、本能が壊れた生き物だけが辿る旅。
旅することが目的や意味といった要素からかけ離れた行為であり、サバイバルであることに気づいた時、モーヴァンの生き方が瞬間的なカタルシスを呼び起こします。

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