No.59
タイトル
去年マリエンバートで
(原題)
L'ANNEE DERNIERE A MARIENBAD
監督
アラン・レネ
キャスト
デルフィーヌ・セイリグ、ジョルジュ・アルベルタッツィ他 
制作
1960年/フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
94分
評価
★★★★
<ストーリー>
整然と対称的に設計された庭を持つ城館。そこでは社交界に身を置く人々が退屈なパーティに興じている。そこである男が女を見つけて声を掛けた。男は言う「ちょうど1年前にあなたと会っている」と。しかし女にはそんな記憶はなかった。やがて男の口から語られる過去の”記憶”に聞き入るうちに、女にとっての”現実”と”過去”との境界線が消えていく.......。


<コメント>
『アメリカの伯父さん』(1980)、『恋するシャンソン』(1997)等、批評家にも評価の高い作品を撮り続けるフランスのアラン・レネ監督の作品。
巨大な城館の中で、1年前の”記憶”について語り合う男と女の意識を映像化した作品です。
物語は基本的に建物の中だけで進行します。主役である男と女以外の登場人物は時折あたかも存在しないかのように(または2人とは全く関係無いかのように)静止し、唯一外界との接点とも言える庭は、頻繁に映し出されるものの、その直線的でシンメトリックな造成はおよそ石や樹の息遣いのようなものを感じさせません。どこかシュールレアリズムの絵画のようにも思えます。
2人のやりとりに女の夫が絡みますが、それもどこかかみ合ってなく、夫はまるでそれがホテルにおける自分の役割かのようにゲームを続けます。またその奇妙なゲームや、射撃の場面、男が語る”記憶”等、ここでは様々な事が終わりの無いループのように繰り返されます。それはすき間なく完全に繋がっていて、関わろうとする我々の意識を排除するかのようです。
また男の”記憶”は微に入り細に入り語られますが、女の質問に対しては、急にあやふやになる部分もあります。しっかりした口調で語られる”記憶”ですが、やはりそれは過去のものなのです。

そうやって物語が進むうちに、やがて我々は全てが虚構の世界、男の記憶の中の世界なのではないか、いつまで経っても感情移入等というものは無理ではないか、と感じ始めます。したがって、ひとつひとつのセリフや状況を一生懸命追っていくとちょっと疲れるかもしれませんが、美しいモノクロの映像や、絵画的なカメラワーク、過去を描写するセリフに不安をかき立てるオルガンの音等、全てが一体となって男と女の意識を無造作に紡ぎだし続けているのだと捉えると、何とも危うい白昼夢を見ているような不思議な感覚に襲われます。
冒頭のホテルの中を迷路のようにカメラが追う場面がありますがそれがまさにこの映画を象徴していると言えるでしょう。
一応の決着を見るものの、それでもおそらくどこにも行き着かないだろうと思わせるラストも含めて、やはり一見の価値有りだと思います。

なお、脚本は1950年代のフランスにおける”ヌーヴォー・ロマン”と呼ばれるアンチ・ロマン一派の代表格アラン・ロブ=グリエです。
また本作品は1961年のヴェネチア国際映画祭で『サン・マルコ金獅子賞』を受賞しています。

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