D-Movie(No.490)
タイトル
そして、ひと粒のひかり
(原題)
MARIA FULL OF GRACE
監督
ジョシュア・マーストン
脚本
ジョシュア・マーストン
キャスト
カタリーナ・サンディノ・モレノ、イェニー・パオラ・ベガ他
制作
2004年/メキシコ
ジャンル ドラマ
上映時間
101分
評価
★★★★

【 ストーリー 】
貧困が渦巻くコロンビアの田舎町。17歳のマリア(カタリーナ・サンディノ・モレノ)は家族の生活を支えるため生花工場で働く日々。そんな暮らしの中で、好きでもない男の子供を妊娠し、さらに工場もクビになってしまう。夢も希望も感じられない彼女だったが、ひょんなことから知り合った男から大金を稼げる話を聞かされる...。

【 コメント 】
極度の貧困と悪化した治安から抜け出せない南米コロンビアを舞台に、家族を養うため、自らの体を張って麻薬の運び屋となった17歳の少女の物語。
監督は『ニューヨーク、アイラブユー』(2008)のジョシュア・マーストン。これが長編デビュー作というから驚きです。演出の技術の高さが素晴らしいですね。主人公のマリアが序盤に行うセックスシーンのけだるさ。そして妊娠したと打ち明けるもそれが本当かどうかはわからない。そうやって見る側にも不安を強要しておいて、思わぬところでその真意をネタ明かしします。妊娠のエピソードに限らず、伏線の張り方と明かし方が見事です。主人公のマリアを演じたカタリーナ・サンディノ・モレノはコロンビア人として初めてアカデミー主演女優賞にノミネートされ大きな話題となりました。常に不安を抱えた憂いのある表情、お腹の中の子供をエコー検査で見たときの喜びの表情、アカデミー賞ノミネートも納得です。

家族のために生きることを強いられた少女に自分の人生はありません。そして、それを利己的な理由で振り払うほどの勇気も経験値もありません。しかしながら、人は己のためでは無く、他者のためだからこそ動けること、決断できることがあります。利己的な理由による行動は後悔をもたらすかもしれませんが、利他的な理由による行動は希望を招き入れます。全編を覆う閉塞感、ラストもハッピーエンドではありませんが、少女がただ欲望の赴くままで無く、本当の意味で自らの人生の第一歩を踏み出すシーンには、間違いなく希望が感じられます。
時に、”希望”は人々を出口のない迷宮に誘い込みます。また、偽の”希望”ほど、人間にとってやっかいなものはありません。それでも、私たちは”希望”無しには生きることはできません。コロンビアの悲壮な状況がそれを露にしますが、そうでなくても私たちは死に向かって生きているわけですから。コロンビアの内情と国の情勢に翻弄される少女の人生を絶妙のバランスで描いた作品。

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