No.69
タイトル
マラソン マン
(原題)
MARATHON MAN
監督
ジョン・シュレシンジャー
キャスト
ダスティン・ホフマン、ローレンス・オリヴィエ、ロイ・シャイダー他 
制作
1976年/アメリカ
ジャンル サスペンス
上映時間
125分
評価
★★★
<ストーリー>
伝説のマラソン・ランナー”アベベ”を崇拝するコロンビア大学の学生ベーブ(ダスティン・ホフマン)。彼は日課であるセントラル・パークのランニングを続けながら、論文の制作に時間を費やす日々を送っていた。そんなある日、兄シーラ(ロイ・シャイダー)がヨーロッパからN.Yにやってくる。久しぶりの再会を喜び合った2人だが、ナチ戦犯のゼル(ローレンス・オリヴィエ)の思惑の下、恐るべき事態が彼らの間近に迫っていた......。

<コメント>
『真夜中のカーボーイ』(1969)でアカデミー賞を受賞したジョン・シュレンダー監督の作品。原作・脚本は『明日に向かって撃て!』(1969)の脚本等で知られるウィリアム・ゴールドマン。英雄”アベベ”を崇拝しジョギングを趣味にするN.Yの学生がナチ戦犯の計画に巻き込まれていくサスペンス・ドラマです。

主人公の大学生にダスティン・ホフマン、その兄にロイ・シャイダー、悪役に名優ローレンス・オリヴィエとなかなか豪華な顔ぶれが揃っています。中でもローレンス・オリヴィエ演じるナチ戦犯の歯医者は、彼の冷徹な瞳の演技もあって強烈なキャラクターに仕上がっています。白髪を剃った”てかてか頭”も貫禄十分。ある意味この作品を有名にしたとも言える、彼が主人公の歯を痛めつける拷問シーンは、やはり一見の価値ありです。これを観るとつくづく歯医者は怒らせてはいかんと思いますね。ローレンス・オリヴィエの目、イっちゃってます。以前ダスティン・ホフマンの演技はローレンス・オリヴィエに比べるとちょっと影が薄いかな−と思っていたのですが、久しぶりに観ると、痛めつけられた後のホフマンの演技こそ、歯の痛みをリアルに感じさせている部分もあるな−と思いました。(ちなみに虫歯のある人は治してから観ましょう)。もちろん父の無念の死に対する想いを内に秘めながら生きる主人公の心情の描写や、真夜中のストリートを悪役に追われる場面、慣れない銃を持って悪者と対決する場面等、緊張感のある演技はさすがです。ダスティン・ホフマンとロイ・シャイダーが兄弟というのは何かいかにもという感じですが。

かつてのナチ戦犯が現代社会で暗躍するという設定は結構多く見られますが、その中でもサスペンスものとして成功している方だと思います。どんでん返しの多い内容ながら、正統派サスペンスの緊張感が保たれているのは、コンラッド・L・ホール(『明日に向かって撃て!』(1969)、『アメリカン・ビューティー』(1999))の映像とカメラ・ワークのうまさでしょうか。また登場する小物の使い方もうまく、歯科用の器具や針金(ピアノ線?)のような凶器、鋭利なナイフ等生理的に痛みを感じさせるものが多く、雰囲気を盛り上げています。
ただ前半で描かれた”父の死”や”主人公と父との関係”についてはもっと突っ込んでも良かったのではないかと思います。また、兄の心理描写についても少し物足りなかった気がします(兄と父との関係等)。この辺がしっかり描かれていると物語がよりわかりやすくなったし、主人公と兄との絆も深みが感じられたように思います。後ストーリー的には歴史的背景のある組織が動いている割にはあっさりケリがついてしまったような感もありますが、これはまあ許容範囲でしょうか。

セントラル・パークをジョギングするのが趣味の普通の学生が、突然過去の人間たちの思惑の中に絡め取られ生命の危機に晒される怖さ、そして我々が知らないところでうごめく組織的な悪の怖さ、単純に普段見慣れない凶器・武器等の怖さ、そういう恐さが堪能できる秀作であると思います。

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