No.247
タイトル
メイド・イン・ホンコン
(原題)
香港製造
監督
フルーツ・チャン
脚本
フルーツ・チャン
キャスト
サム・リー、ネイキー・イム ペン、ウェンバース・リー他
制作
1997年/香港
ジャンル ドラマ
上映時間
108分
評価
★★★★
<ストーリー>
主人公チャウ(サム・リー)は香港のダウンタウン、低所得者アパート育ち。父親は愛人と家を出て、母親と二人暮し。中学を卒業して、定職には就かず、取立ての手伝いをする毎日。弟分ロンがビルの屋上から飛び降りた少女サンの遺書を拾ってから、奇妙なことが起こり始める。そんな中、チャウは取立て先の少女に恋をしてしまう.....。

<コメント>
中国返還前の香港で製作されたインディーズ作品。助監督時代の長かった陳果(フルーツ・チャン)監督が、昔から撮り溜めていたフィルムを元に作り上げた執念の1本。続く『花火降る夏』(1998)、『リトル・チュン』(1999)を含め、“香港返還三部作”と呼ばれるシリーズ(それぞれに関連性はありません)の初作で、中国返還を控えた香港の不安、混沌、熱が浮き彫りにされています。
低予算で作られたとは言え、映像のクオリティは高く、安っぽさはありません。登場人物はほとんどが素人なのですが、それが逆にドキュメンタリーっぽいリアリティも感じさせます。
私は返還前の香港に行ったことがありますが、当時の香港は返還を数年後に控え、特別に喜びも悲しみもしない、混沌とした雰囲気であった気がします。それでいて返還をモチーフにしたTシャツがいたるところで売られる等、人々は相変わらずビジネスを中心に活気づき、パワーがある。本作を見ていると、あの頃の香港をリアルに思い出します。当時、あの街の一角でこんなことが起こっていたとしても不思議ではない、そういう感覚でしょうか。これは偏見だと思いますが、主人公の身体の線の細さもまさに香港を強く感じさせます(実際、たまたまかもしれませんが香港で太った人を見たことがありませんでした)。

主人公は自分の日常の中に居場所を見つけられず、自分と同じ弱者に同情しながら、取立て家業に身を費やす若者。自殺した少女の手紙、障害を持つ気弱な友人、ボスから手に入れた銃、さまざまなアイテムに囲まれながら疾走する日々。街がどうなろうと、とにかく誰もが忙しく身を削りながら生きているこの社会では、日常に忙殺されることが唯一の生き延びる手段なのです。恐怖もあせりもすべて押さえ込んで走り続けなければ窒息してしまう世界。他者への必要以上の関与は命取り。それでも主人公は死んでしまった少女を想い、死に向かう少女を人を愛します。多少ベタなところもありますが、スピード感のある演出と青みがかったクールな映像が切ない作品です。

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