No.479
タイトル
レオポルド・ブルームへの手紙
(原題)
LEO
監督
メヒディ・ノロウジアン
脚本
アミール・タジェディン他
キャスト
ジョセフ・ファインズ、エリザベス・シュー他
制作
2002年/イギリス、アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
103分
評価
★★★★

【 ストーリー 】
メアリー(エリザベス・シュー)は、大学教授の夫が出世してゆく陰で、自分だけが育児と家事に埋没し、取り残されたような寂しさを感じていた。友人の話を信じ、夫の浮気を疑い、やけになって、出入りの職人と関係を持ってしまう。そんなある日、夫と幼い娘が交通事故で死んでしまう。その日、メアリーは男の子を出産するが、“罪の子”を愛することができず...。

【 コメント 】
殺人の罪で15年の刑を受けた男が、母の愛を得られずに育った少年との手紙のやり取りを通して癒され、未来に希望を見出していく物語。主演は『恋におちたシェイクスピア』(1998)のジョセフ・ファインズ。登場人物の名前”レオポルド・ブルーム”や”スティーヴン”など、アイルランドの文豪ジェイムズ・ジョイスの小説『ユリシーズ』がベースとなっていますが、もちろん、同作を知らなくても全然問題ありません。

夫を信じることが出来ず、己の罪から生まれた子を愛することが出来ない母親。母親の愛を受けられず、生まれてきたことに罪を感じる息子。そしてひとつの殺人が二人の関係を決定付ける...。
魂を殺され、死んだも同然の人生を送って来た息子が唯一よりどころとしてきた少年との手紙のやりとり。これは単なる癒しをモチーフにしたヒューマン・ドラマではなく、一人の人間の魂の再生の物語です。人間の生き様を規定する”罪”。”罪”は償うことも贖うこともできる、許すことも出来ます。ところが、ここに登場する母親は自らの犯した罪を許せませんでした。息子もまた、母親を許せませんでした。そして二つの魂が死んでしまったわけです。しかし、少なくとも片方の、スティーヴンの魂は、他者との対話を通して再生の旅に出ます。
心の傷と向き合うこと、つらい過去と向き合うことは大変苦しい作業です。その苦しい旅路を淡々と(内心はもちろんそうではないはずですが)歩むスティーブンには人間としての強さを感じます。そのスティーブンも同僚の女性を救った時に、「助ける勇気がずっと欲しかった」と告白します。人を許すことは救うこと、やはりスティーヴンもまた、母親を許せなかった自分を責め続けてきたのではないでしょうか。
15年の刑期のみならず、生まれてからずっと背負い続けてきた業からやっと解き放たれたスティーブン、その魂の再生と解放がメヒディ・ノロウジアン監督のこだわりの映像で清清しく表現されています。

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