No.243
タイトル
(原題)
河流
監督
蔡 明亮(ツァイ・ミンリャン)
脚本
ツァイ・ミンリャン、ヤン・ピーイン、ツァイ・イーチュン
キャスト
リー・カンション、ミャオ・ティエン、ルー・シャオリン他
制作
1997年/台湾
ジャンル ドラマ
上映時間
115分
評価
★★★★
<ストーリー>
主人公のシャオカン(リー・カンション)は街で昔の女友達(チェン・シアンチー)と再会。映画スタッフである彼女に誘われ、撮影現場を訪れた彼は、ふとしたことから、河に浮かぶ死体の役を演じることに。しかし、その翌日から彼の首は曲がったままになってしまう。そしてこの奇病がシャオカンの家族関係に変化をもたらすことになるが.....。

<コメント>
台湾の映画監督、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)の作品。父と母と息子の3人家族の歪んだ日常を淡々としたクールな映像で綴ったドラマ。同監督の『青春神話』(1992)、『愛情萬歳』(1994)と合わせて長編3部作と呼ばれており、内容的に連作ではありませんが、出演している俳優等は微妙に重なっています。
登場人物たちは、みんなノーマルとは言えないものの、とりあえず家族は家族として存在しているし、暴力が顕在化しているわけでもありません。誰かが誰かを支配しているわけでもなく、それぞれが自分の思うように生きています。しかし、その内実は、明らかに歪んでいます。特に肉体を媒体とした人間関係は何者にも制御されていません。スクリーンに登場するのは人間たちですが、ひょっとしたら彼らは肉体を持て余している魂なのではないかとさえ思えてきます。そして、その所在無さが見ている私たちに何とも言えない居心地の悪さを感じさせるのです。こういう空気感はただ単に長回しで撮影したり、主人公の首をふらふらさせていればよいというわけにはいきません(もちろん、そういう演出が奏功しているのは間違いないと思いますが)。このあたりがこの監督のうまいところです。
肉体はさまざまな場所で、いろんな相手と交わりますが、どれもウェットではなく、ドライです。それと対照的に、彼らが住む家は雨漏りで四六時中濡れています。首の病気をきっかけに家族はコミュニケーションを取り始めますが、その溝はあまりに深く、もう埋まることはありません。実はこういう作品を、どうしようもなく異常で自分たちとは全く無縁の物としては捉えられず、どこか日常性や親近感を覚えてしまうところが私の、もしくは私たち現代人の危ういところではないでしょうか。

<以下、ネタばれ注意!>
ラストシーン。息子がベランダから飛び降りたところで終わるのではないかと思いました。でもそうはなりませんでした。これだけ閉塞的な世界に生きていも死ぬほどではないということでしょうか。だとしたら、よけいに根は深く、怖い。

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