No.157
タイトル
インディアン・ランナー
(原題)
THE INDIAN RUNNER
監督
ショーン・ペン
キャスト
デビッド・モース、ビゴー・モーテンセン、ヴァレリア・ゴリノ他
制作
1991年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
126分
評価
★★★★
<ストーリー>
ジョー・ロバーツ(デビッド・モース)はハイウェイ・パトロールマン。弟のフランク(ビゴー・モーテンセン)はベトナム帰りのアウトロー。フランクは定職にも就かず恋人のドロシーと楽しく暮らしている。彼女が身ごもったのをきっかけに職に就いたフランクは、仕事にも就き、更生したかのように見えたが.....。

<コメント>
アメリカを代表するミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンが1982年に放ったアルバム『ネブラスカ』。荒涼としたモノトーンのジャケットが印象的なこの作品は、ギターとハーモニカだけで淡々とアメリカに巣食う不安と恐怖に満ちた日常を切り取った問題作。冒頭から死刑囚について語る重い内容ですが、個人的には彼のキャリアの中でもかなり好きな作品です。その5曲目に収められたのがある兄弟の物語を歌った『ハイウェイ・パトロールマン』。そしてその曲に衝撃を受けたショーン・ペンが映画化を決意し、作られたのが本作『インディアン・ランナー』です。初監督のショーン・ペンにデニス・ホッパー、チャールズ・ブロンソンらの豪華共演陣が脇を固め、アメリカン・ニュー・シネマの匂いを感じさせる秀作となっています。

結婚し、幸せな家庭を築いている警察官の兄とベトナム帰りで定職に就かず面倒を起こしてばかりの弟。二人の兄弟が繰り広げる相克を描いた物語。よくあるストーリーと言えなくも無いですが、脇役で才能を発揮するデビッド・モースがアメリカの日常とその日常が生み出した”鬼っ子”の弟に翻弄される警官役を好演。弟役のビゴー・モーテンセンも心に不安と怒りと尊敬を内在させたキャラクターをうまく演じています。まじめな兄と出来の悪い弟、しかし作中、現代社会において”人を殺す”という行為に手を染めるのは兄が先。冒頭からアメリカの歪みが表現されています(このエピソードがもっと全編にわたって暗い影を落とす演出でも良かったかも)。決して安全ではない社会で人との絆を求め、さらに他人の心を理解できる人間は、人々の空虚で荒涼とした心に触れ、逆に自らの行き場をなくしてしまいます。結果として父親も弟もこの世界から姿を消しますが、兄はその理由をおそらくちゃんと理解できていません。しかし、理解できても出来なくても、いずれにしても不安から逃れることの出来ない社会、それがアメリカの社会なのです。
父親を演じる名優チャールズ・ブロンソンは枯れた演技を見せてくれますが、父と兄との関係性は少し淡々としている感じでちょっと残念。また、弟が狂気に走る理由(ベトナム戦争の影響等)ももう少し掘り下げても良かった気がします。それでも兄弟の心が一瞬交錯するラストシーンは秀逸。『アメリカン・ビューティ』(1999)も現代アメリカの歪を見事に映像化していましたが、本作の方が救いがない分、じんわりと哀しみと寂しさが身に沁みてきます。
間違いなくこれからのアメリカ映画界の一端を担う存在になるであろう(いや、もうそうなっているか)ショーン・ペンの持ち味が存分に味わえる作品です。見終わったらブルース・スプリングスティーンの『ネブラスカ』をどうぞ。ちなみに登場人物の名前も曲と同じです。

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