No.118
タイトル
if もしも・・・
(原題)
if...
監督
リンゼイ・アンダーソン
キャスト
マルコム・マクダウェル、デヴィッド・ウッド、アーサー・ロウ他
制作
1968年/イギリス
ジャンル 青春ドラマ
上映時間
112分
評価
★★★★
<ストーリー>
選ばれた名門の子弟のみが学ぶことを許されるイギリスの伝統的なパブリックスクールの新学期が始まった。上下関係は厳しく、規則を守れないものには容赦ない罰が待っている。そんな偽善を憎む異端児のミック(マルコム・マクダウェル)はスクールや周りの人間と同調していくことが出来ず、徐々に道を踏み外していく.....。

<コメント>
『八月の鯨』(1987)が日本でも大ヒットしたインド出身のリンゼイ・アンダーソン監督の作品。主役は同監督の作品で強烈な個性を発揮するマルコム・マクダウェル(『時計仕掛けのオレンジ』(1971)等)。伝統と格式を重んじるイギリスの全寮制パブリック・スクールを舞台に、既存の習慣や規律に反発し革命を夢見る少年たちの生き様を描いています。

この作品の背景には60年代頃から世界的に波及していた学生運動のパワーが存在しています。日本でも60年安保闘争があり、後半にはベトナム反戦運動も盛り上がりました。また最近では、連合赤軍のメンバーが起こした「浅間山荘事件」を題材にした小説や映画がいくつか発表され、いろんなメディアで当時の状況や様子が語られました。個人的には67年生まれなので、大学時代も学生運動はほとんど無く、こういった作品に触れても学生運動のパワーをリアルに、また身近に感じることはあまりありません。
しかし、アンダーソン監督によるパブリック・スクールの描写はドキュメンタリーっぽくてリアルです。また先生たちのさまざまな奇行も皮肉が利いています(これ笑えます)。さらに、マルコム・マクダウェルの少し反逆的な目つき・振る舞いの演技が素晴らしく、管理しようとする体制側とそれに抗う反逆分子たちとの緊張感がしっかりと伝わってきます。
面白いのは、この手の映画で描写されるイギリスのパブリックスクールというのは本当にどれも同じだということ。生徒間のいじめは結構陰湿だし、先生は皆一様にしつこくてねちっこい質問の仕方をします。さらに規則を破る者は例外なくお尻を鞭でぶたれる。私の大好きな映画『小さな恋のメロディ』(1971)もイギリスのパブリックスクールが舞台でしたが、まさにこんな雰囲気でした。で、やっぱり主役はお尻をぶたれていました。
そういったリアルなスクールの描写に反し、途中モノクロとカラーが交差する演出や登場人物たちのエキセントリックな絡み合い(虎の物まねをする二人等)等はとても幻想的です。現実がきつければきついほど、そこから離れたくなるのは当然のこと。そしてだからこそラストがさらに衝撃的に感じられます。最初は部屋にこもって理想を語っているだけの若者たちが、徐々に理想と現実を混在させ、最後には理想を超越して現実に転化してしまう様を見事に映像化していると思います。スクールでの人間関係は一見ウェットに見えますが、中身は実は空虚で乾いています。「暴力と革命こそが純粋だ」という主人公ミックのとった行為は、そんな薄皮を蹴散らす行為。「お前たちの行き着く先はこれだろっ」と言わんばかり。普通の学生まで巻き込んでいくような時代の熱気を描いている、という意味では『いちご白書』(1970)なんかに一歩譲りますが、この突き抜け感は反逆を描いた映画の中でも相当なものだと思います。
ちなみにこの映画は1969年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞しました。

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