No.97
タイトル
ヘカテ
(原題)
HECATE
監督
ダニエル・シュミット
キャスト
ベルナール・ジロドー、ローレン・ハットン、ジャン・ブイーズ他
制作
1982年/スイス、フランス
ジャンル 恋愛ドラマ
上映時間
108分
評価
★★★
<ストーリー>
灼熱の砂漠の町、フランスの植民地である北アフリカのある国に領事として赴任したロシェル(ベルナール・ジロドー)。焦げ付くばかりの熱気と乾いた空気が支配するその町で、彼はそこでめぐり合った人妻クロチルド(ローレン・ハットン)との愛にふける。しかし多くを語らないクロチルドを理解出来ないロシェルは、やがて彼女に嫉妬を抱くようになる.....。

<コメント>
回想シーンを多用し幻想的な映像を紡ぎだすダニエル・シュミット監督の作品。フランスの植民地である北アフリカの領事館に勤務する男が経験する甘美で残酷なラブ・ストーリー。

主演はベルナール・ジロドー。フランス俳優界の中では派手な存在ではありませんが、「パッション・ダモーレ」(1980)、「焼け石に水」(2000)等での演技は個人的にも好きです。
遠い果ての地で特に野心も無い男が一人の人妻に虜となり、己の欲望を放出させ嫉妬の炎を燃やし、そして滅びていく。とことんまで落ちた男は抜け殻のような人生を送りますが、それが出世に繋がってしまう皮肉。欲望の対象を失う代わりにその対極にあるものが手に入ってしまいます。一時の夢と言うにはあまりに狂おしく残酷な世界。自らの欲望に滅ぼされるも、滅びきれない弱さを持った男の役をジロドーが好演。まさにハマり役。以前ここでも紹介した「キリング・タイム」(1987)でも似たような役を演じていましたが、こっち(「ヘカテ」)の方が上ですね。
またこういうストーリーの場合、男を翻弄する女役も重要ですが、そういう意味ではローレン・ハットンのクールさは良いです。身体の美しさももちろんですが、受け入れがたい男の欲望に対しては毅然とした態度を取るあたりも大人の女の強さを感じさせます。こういう女の人が夫と遠く離れたところで奔放に生きていたら男なら誰でも惹かれるでしょうね。

ただ、光の陰影を使ったセックス・シーン等、官能的な場面は思ったよりインパクトは少なかったです。きれいと言えばきれいなんですが狙いすぎの感も。そのあたりが良くも悪くもダニエル・シュミット。もっとリアリティのあるべとべと感があるか、女が存在するのかどうかさえも分からないような幻想的な危うさを放つか、どちらかに振れた方が良かったような気がします。
アフリカの持つ暑さ、乾き、見たいなものはうまく表現されていました。間に挿入されるイスラム教の祈りのシーンの美しさがとめどない人間の欲望を浮き彫りにしています。途中フラッシュバック的に過去のシーンが挿入される部分や、終盤挿入されるドキュメンタリーを思わせるシーン等、男が生きてきた移ろい行く夢の時間をうまく映像化していると思います。
近年は作品のリアリティが増してきているダニエル・シュミット監督の耽美な映像が堪能できる中期の秀作。

<以下、ネタばれ注意!>
シャンパンの泡に始まる男の残酷ではかない愛の回想録。女に虜にされ嫉妬に狂いながらも結局彼女を殺してでも手に入れることの出来ない弱さ。男に出来るのはその思い出に浸りながら女と再び会えるのを待つだけ。そして女に会えても結局何も出来ない哀しさ。現実の世界のルールで生きることを選んだ男に夢と現実の境が消えた快楽の世界は2度とやってこない。

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