No.181
タイトル
HEARTハート
(原題)
HEART
監督
チャールズ・マクドゥガル
キャスト
サスキア・リーヴス、クリストファー・エクルストン、ケイト・ハーディー他
制作
1998年/イギリス
ジャンル ドラマ
上映時間
84分
評価
★★★
<ストーリー>
医療用のメスで一心不乱に墓を掘り起こす女が逮捕された。彼女の名はマリア(サスキア・リーヴス)。全身返り血を浴び、手には血まみれの紙袋。警察に連行されたマリアは、やがて事件のすべてをゆっくりと語りだすが、そこには心臓移植をめぐる、恐るべき憎悪と嫉妬の物語が隠されていた。.....。

<コメント>
息子を事故で失った母、そしてその息子の”ハート(=心臓)”を移植された男、さらにその男の妻と愛人4人が繰り広げる愛と憎しみのドラマ。サスペンス、というかここまで来るとスリラーといった方が近いと思えるテイスト。監督はロンドンの“チューブ”という愛称で知られる地下鉄を舞台にしたオムニバス映画『チューブ・テイルズ』にも参加したチャールズ・マクドゥガル。
冒頭、一人の女が紙袋を大事そうに抱えて街を歩いたり、電車に乗ったりする様子が描写されています。この画が鮮烈。女を演じるサスキア・リーヴスの浮遊しているようで芯の通ったクールな眼差しと、青味がかった冷たい色目の映像、そしてそこにくっきりと映し出される、紙袋から滴る血と思しきしずく。うーん、一気に物語に引き込まれます。
心臓移植に成功したとは言え、妻の不倫の疑惑が払拭できず、人間にも心臓にも所有感を得られない男、息子の心臓が生き続けていることを悪くは思わないが、予想していたのとは違う形に戸惑う母、夫の心臓病が克服されても不倫を抜け出せない女、夫の存在、状況に関わらず女を愛し続ける愛人の男、これだけのキャラクターを絡めた脚本はなかなか面白いです。
心臓という臓器は全身に血を送るというその役割から、生命を維持する上で最も重要な臓器として認識されているのではないかと思います。そして、人が”生きている”というのはこの心臓が動いているかどうかで判断される。もちろん、脳死という状態もあるでしょうし、医療の分野だけでなく、宗教的な思想も含めて考えるとそう単純な話ではありません。しかし、本作では主人公の母親は移植された息子の心臓をわが子の存在そのものであるかのように慈しみ、追い求めます。作品自体は随所に衝撃的な映像をちりばめたこともあってインパクトも強いのですが、このあたりのテーマの追求に深みが感じられないところが残念。
彼女が息子の心臓を手に入れて最終的に墓に戻そうとしたのも、(息子本人がドナー提供に同意していたとは言え)心臓=息子の一部という観念のなせる業なのか、もはや機能する必要の無い臓器をただしかるべきところに返してあげようと思っただけなのか。個人的には後者なのだと思いますが、そのあたりの描写も含めて、全体的に息子をなくした母親の心情や、息子の心臓に対する情念がもっとしっかり描かれていれば良かったと思います。不倫ものとして見れば結構ドロドロしていますし(このあたりがいかにもイギリス映画っぽいのですが)、さらに母親の異常な行動が表に出てくると、単なるスリラーで終ってしまいますから。

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