No.186
タイトル
白昼の死角
(原題)
白昼の死角
監督
村川透
キャスト
夏木勲、竜崎勝、天知茂、千葉真一、丹波哲郎、島田陽子他
制作
1979年/日本
ジャンル サスペンス
上映時間
154分
評価
<ストーリー>
昭和二十三年、東大法学部はじまって以来の秀才と言われた隅田光一は、同級生の鶴岡七郎らともに金融会社「太陽クラプ」を設立。新聞広告等を巧みに使い急成長をとげたが、やがて隅田は闇金融容疑で検挙され、挙句に焼身自殺してしまう。隅田の自殺を目の当たりにした鶴岡は犯罪者として生まれ変わる決意をする.....。

<コメント>
1970年代後半から次々と小説を映画化し、「読んでから見るか、見てから読むか」のキャッチフレーズで映画界に新風を巻き起こした角川映画。残念ながらエンタテイメントよりの作りが多く、原作を超える作品は生まれませんでしたが、昭和のおどろおどろしさを最初に感じさせてくれた名探偵・金田一耕助シリーズ(『犬神家の一族』(1976)、『悪魔が来りて笛を吹く』(1979)他)や、松田優作主演の一連の作品(『野獣死すべし』(1980)、『蘇える金狼』(1979)他)等々、学生の頃に見たせいもあって、かなり印象には残っています。サントラ展開なんかも派手でしたからね。今でも『人間の証明』(1977)の冒頭のタイトルが出る場面等はマジでカッコいいと思います。
中でも好きだったのが(原作が、ですが)高木彬光氏の『白昼の死角』です。本作は高木彬光氏が社会派推理小説作家として認められる出世作となった作品で、現実にあった事件・人物(”光クラブ”という金融会社を創設し巨額の主資金を集め、最後は返済不能に陥って自殺する東大法学部始まって以来の天才といわれた山崎晃嗣)がモデルとなっています。昔、文庫本で680ページ、厚さ2.5cmというボリュームにびびりながらも一気に読んでしまった記憶があります。殺人こそ犯さないものの、天才的な頭脳で社会の裏、法律の裏を渡り歩き、大金をせしめ続ける主人公・鶴岡七郎には憧れすら抱いたものです。今の時代に読んでも十分楽しめる傑作だと思いますよ。
ただ、映画では、他の角川作品と同様に原作の持つ深みはほとんど伝わってきません。主人公役の夏木勲と検事役の天知茂の迫力ある演技のおかげで何とか観ていられるといったところでしょうか。冒頭の鶴岡の友人・隅田光一(!岸田森)の自殺シーンや、鶴岡の妻の無理心中等は、人間の怨念や情を感じさせますが。鶴岡が見る悪夢に出てくる死者たちの描写も見所、というかただただ面白い(岸田森、なぜに野球のユニフォーム?)。
原作では最後は主人公・鶴岡七郎から高木秋光氏に宛てた手紙で締めくくられているのですが、その中で鶴岡はこう語ります。「私の行為そのものは、たしかに、法の眼から見ればあやまった面もあるでしょう。しかし日本の法律は、戦争犯罪者をみずからの手では裁けなかったのです」。映画にはこういう凄みが足りないんですよねー。戦後直後、というきな臭い時代背景ももっと伝わってきて欲しかった。公開当時のキャッチフレーズ「狼は生きろ 豚は死ね!」は印象的でしたが。その他の俳優陣は千葉真一、丹波哲郎、中尾彬、佐藤慶等々、角川映画らしく豪華です。ちなみに『ブレードランナー』(1982)の怪演が印象的なエドワード・ジェームズ・オルモスも出演しています。

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